日本語の会話や文章では、「それに」「そして」「また」といった接続語がよく使われます。
これらは一見似ているようで、実は微妙なニュアンスの違いがあります。
特に「それに」は、カジュアルな場面で使われることが多い表現ですが、他の接続語との違いを理解して適切に使い分けることで、より自然な日本語表現が可能になります。
この記事でわかること
- 「それに」「そして」「また」それぞれの基本的な意味と特徴
- 3つの接続語のニュアンスの違いと使い分けのポイント
- シーン別(SNS・日常会話・ビジネス)での適切な使用法
- よくある誤用パターンと違和感のない使い方
- 世代別の使用傾向と若者言葉としてのバリエーション
それでは、これらの接続語の違いを詳しく見ていきましょう。
「それに」の基本的な意味と用法
「それに」とは
「それに」は、前に述べた内容に追加情報を加えるときに使う接続語です。
特に、話し手の主張を強める効果があり、カジュアルな会話でよく使われます。
「その上」「加えて」といった意味合いを持ち、前述の内容に関連する新たな情報を提示する際に使用されます。
基本的な使い方
A: このカフェ、雰囲気がいいね。
B: うん、それに料理も美味しいよ。(前述の「雰囲気がいい」に加え、「料理も美味しい」という情報を追加)
「それに」は特に以下のような特徴があります。
- 感想や意見の追加に適している
- 話の流れを自然に展開させる
- 話し手の気持ちや評価を含めた追加に使われることが多い
- 前の内容に関連性の高い情報を追加するときに使う
「それに」「そして」「また」のニュアンスの違い
3つの接続語の比較表
接続語 | 基本的な意味 | 使用場面 | フォーマル度 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
それに | 前述内容+補強情報 | 会話・SNS・カジュアル文章 | ★★☆☆☆ | 感情的要素を含むことが多い |
そして | 時間的/論理的連続 | 論文・小説・公式文書 | ★★★★☆ | 客観的な事実の連続に適している |
また | 並列関係・別の観点 | ビジネス文書・論文 | ★★★★★ | 話題の切り替えや新たな視点の提示に使う |
「それに」vs「そして」
「そして」は時間的・論理的な連続性を表現するのに対し、「それに」は前述の内容を補強・強調する効果があります。
例1:「彼は資料を準備して、そして会議に出席した」(時間的連続)
例2:「このソフトは使いやすい。それに、価格も手頃だ」(補強情報)
「そして」は出来事の連続や流れを客観的に述べるのに適しており、「それに」はより主観的な追加情報を述べるのに適しています。
「それに」vs「また」
「また」は比較的フォーマルで、別の観点や並列的な事項を挙げるときに使われます。
一方、「それに」は前の内容と強い関連性を持つ情報を追加するときに使います。
例1:「この商品は耐久性に優れています。また、デザイン性も高いです」(別の観点)
例2:「この商品は耐久性に優れています。それに、値段も安いんです」(関連情報で主張を強化)
「また」は客観的な事実を淡々と並べるニュアンスがあり、「それに」は話し手の主観や評価を含む追加情報を示す傾向があります。
カジュアル度合いの違いと使用シーンの適切な選択
フォーマル度による使い分け
- 最もカジュアル:「それに」(友人との会話、SNS投稿など)
- 中間的:「そして」(小説、一般的な文章など)
- 最もフォーマル:「また」(ビジネス文書、学術論文など)
シーン別の適切な使用法
日常会話での使い分け
友人:「昨日の映画おもしろかったね」
あなた:「うん、それに俳優の演技も良かったよね」 ← 自然
あなた:「うん、また俳優の演技も良かったよね」 ← やや違和感
SNS・ブログでの使い分け
- カジュアルなSNS投稿:「新しいカフェに行ってきた!雰囲気がよくて落ち着く。それに、スイーツが絶品だった😋」
- ビジネスブログ:「新システムは操作性が向上しています。また、セキュリティ面も強化されました。」
ビジネスシーンでの使い分け
- 社内カジュアル会話:「このプロジェクトは予算内で収まりそうです。それに、クライアントの反応も良好です」
- 公式プレゼン:「当社の製品は耐久性に優れています。また、環境に配慮した素材を使用しております」
メディア別の適切な選択
- チャット・SNS:「それに」(親しみやすさを表現)
- 小説・エッセイ:「そして」「それに」(状況に応じて使い分け)
- ビジネスメール・報告書:「また」(客観性・論理性を重視)
「それに」が特に適した会話・文章のシーン
「それに」は以下のような場面で特に効果的に使用できます。
感情や評価を伝えるとき
「この映画はストーリーが素晴らしい。それに、音楽も心に響くんだよね」
感情や主観的な評価を付け加える際に「それに」を使うと、自然な流れで話を展開できます。
説得や主張を強めるとき
「このプランは費用対効果が高い。それに、実施までの準備期間も短くて済むんです」
相手を説得したいときや自分の意見を強化したいときに効果的です。
会話を盛り上げるとき
A:「昨日のパーティー楽しかったね」
B:「うん、料理もおいしかったし」
A:「それに、みんなの話も面白かったよね!」
会話のキャッチボールの中で「それに」を使うと、話題を広げつつ共感を示せます。
SNSやブログでの使用例
「新しいスマホを買いました✨ 処理速度が早くて使いやすい。それに、カメラの性能も良くて写真がキレイに撮れる📱📷 #新しいスマホ」
SNSでは、自分の体験や感想を展開する際に「それに」を使うことで、カジュアルで親しみやすい印象を与えられます。
世代別・メディア別の使用傾向
年代別の使用傾向
10代・20代
- 「それに」をより略した「しかも」「そんで」などのカジュアル表現を好む傾向
- SNSでは「それに」「しかも」+絵文字の組み合わせが特徴的
「この服可愛い💕 それに安いし最高😍」
30代・40代
- 「それに」と「そして」をバランスよく使い分ける傾向
- 状況に応じた使い分けの意識が高い
「子どもの運動会は天気に恵まれました。それに、子どもたちも元気いっぱいでした」
50代以上
- より形式的な「また」「さらに」などを好む傾向
- 「それに」はより親しい間柄での会話に限定して使用
「今日のセミナーは大変勉強になりました。また、人脈も広がりました」
メディア別の使用実態
SNS(Twitter/Instagram/TikTok)
- 「それに」の使用頻度が高い
- 「それに+絵文字」の組み合わせが一般的
- 若年層では「しかも」「そんで」などの略表現も多い
ブログ・ウェブメディア
- カジュアルな媒体では「それに」、専門的な媒体では「また」の使用が多い
- 読者との距離感を演出する手段として接続語を使い分け
テレビ・ラジオ
- バラエティ番組では「それに」が多用される
- ニュース・報道番組では「また」「そして」が主流
「それに」のよくある誤用と違和感のない使い方
よくある誤用パターン
❌ フォーマルな文書での過剰使用
誤用例:「弊社の製品は高品質です。それに、アフターサービスも充実しております」
ビジネス文書では「また」や「さらに」を使うのが適切です。
❌ 論理的な繋がりがない情報の追加
誤用例:「今日は雨が降っています。それに、私は猫が好きです」
「それに」は前後の内容に関連性がある場合に使います。
❌ 否定的内容の後の使用
誤用例:「この製品は壊れやすいです。それに、値段も手頃です」
肯定と否定が混在する場合は「しかし」「ただ」などを使用するほうが自然です。
違和感のない使い方
✅ カジュアルな会話での共感・追加
A:「この映画感動したよ」
B:「うん、それに音楽も素晴らしかったね」
✅ 肯定的な内容の積み重ね
「このレストランは料理がおいしい。それに、店員さんの対応も良くて気持ちがいい」
✅ 説得力を高める追加情報
「このアプリは使いやすい。それに、無料で使える機能も多いんだよ」
カジュアル接続語の若者言葉的バリエーション
「それに」に代わるカジュアルな接続表現は、特に若年層を中心に多様化しています。
これらの表現は場面や相手によって使い分けることが重要です。
「それに」の代替表現
「しかも」
「それに」よりもさらに強調したい場合に使われます。
「このゲーム面白いよ。しかも、グラフィックがめっちゃキレイ!」
「そんで」
「そして」をより短縮したカジュアル表現で、若者の会話やLINEでよく使われます。
「昨日映画見に行ったんだ。そんで、その後カフェにも寄ってきた」
「プラス」
数学記号から来た表現で、ビジネスカジュアルな場面でも使われることがあります。
「この案は実現可能性が高い。プラス、コスト面でもメリットがある」
「あと」
非常にカジュアルな追加表現として、友人同士の会話でよく使われます。
「明日は雨らしいよ。あと、風も強くなるって」
SNSでのトレンド表現
ハッシュタグ活用
「新しいカフェ見つけた☕ 内装がおしゃれ #それに #スイーツも絶品」
絵文字との組み合わせ
「このコスメ使いやすい✨ それに肌に優しい処方だよ🌿」
文字装飾
「映画よかった~!「それに」俳優さんたちの演技も素晴らしかった…!」
場面別のカジュアル度合いの調整
シーン | 超カジュアル | カジュアル | やや改まった |
---|---|---|---|
親友との会話 | 「あと」「そんで」 | 「それに」「しかも」 | 「そして」 |
SNS投稿 | 「あと」+絵文字 | 「それに」「しかも」 | 「また」「そして」 |
先輩との会話 | × | 「それに」 | 「そして」「また」 |
ビジネスメール | × | × | 「また」 |
FAQ:会話での接続語選びのコツ
Q1: 「それに」と「しかも」はどう違いますか?
A: 「それに」は単に情報を追加するニュアンスですが、「しかも」はより強調や驚きの気持ちを込めて使うことが多いです。
「彼女は英語が話せる。それに、フランス語も少しできる」(単なる追加情報)
「彼女は英語が話せる。しかも、ネイティブレベル!」(驚きや強調)
Q2: ビジネスメールで「それに」を使っても良いですか?
A: ビジネスメールでは「それに」よりも「また」「さらに」「加えて」などのよりフォーマルな表現を使うことをお勧めします。
特に目上の方や取引先へのメールでは注意しましょう。
×「弊社の製品は耐久性に優れています。それに、コストパフォーマンスも高いです」
〇「弊社の製品は耐久性に優れています。また、コストパフォーマンスも高いです」
Q3: 「それに」を文頭で使えますか?
A: 会話では文頭で使うことも可能ですが、文章では前の文に関連づけて使うのが自然です。
A:「この本面白いよ」
B:「そうなんだ」
A:「それに、映画化もされるらしいよ」(文頭での使用OK)
Q4: 「そして」を使うべき場面はどんなときですか?
A: 時間の経過や順序を示したいとき、また物語の展開などで使うと自然です。
「彼は大学を卒業した。そして、外資系企業に就職した」
まとめ
「それに」「そして」「また」はいずれも情報を追加する接続語ですが、使われる場面やニュアンスには明確な違いがあります。
覚えておきたいポイント
- 「それに」はカジュアルな場面で、感情や評価を含む追加情報を伝えるのに最適
- 「そして」は時間的・論理的連続性を表現し、小説や一般的な文章で幅広く使える
- 「また」はフォーマルな文書で、客観的・並列的な情報を追加する際に使う
- 場面や相手に応じて適切な接続語を選ぶことで、より自然で効果的なコミュニケーションが可能に
- 若年層では「しかも」「そんで」などのバリエーションも積極的に活用されている
接続語の適切な使い分けは、日本語表現の幅を広げ、より豊かなコミュニケーションを実現します。
会話やSNSでの「それに」の使い方をマスターして、より自然な日本語表現を目指しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: 「それに」を英語に訳すとどうなりますか?
A: 「それに」は英語の “Also,” “Besides,” “Moreover,” “In addition,” などに相当します。
カジュアルな会話では “Plus,” や “And also,” なども使われます。
Q2: 「それに」「そして」「また」を一つの文章で使うことはできますか?
A: はい、可能です。
ただし、文の流れが不自然にならないよう注意しましょう。
「この店はメニューが豊富です。そして、価格も手頃です。それに、店員さんの対応も良いです。また、アクセスも便利です。」
Q3: 「それに」と「その上」の違いは何ですか?
A: 「それに」はよりカジュアルな表現で日常会話やSNSに適している一方、「その上」はやや改まった表現で、ビジネスシーンや書面でも使えます。
意味としては両方とも前述の内容に追加情報を加える点は同じです。
Q4: 子供に「それに」の使い方を教えるには?
A: 日常の会話の中で自然に使用例を示すのが効果的です。
例えば「このアイスおいしいね。それに、見た目もかわいいね」など、具体的な例を通して理解させましょう。
Q5: 論文やレポートで「それに」を使うのは適切ですか?
A: 論文やレポートなどの学術的文書では、「それに」よりも「また」「さらに」「加えて」などのよりフォーマルな表現を使用するのが適切です。
「それに」は主観的な印象を与えることがあるため、客観性が求められる文書では避けるべきです。