ビジネスメールで「ご連絡いたします」と「お知らせいたします」、どちらを使うべきか悩んだことはありませんか?
この記事では、「ご連絡」と「お知らせ」の違いを明確にし、状況に応じた適切な使い分け方を解説します。
この記事でわかること
- 「ご連絡」と「お知らせ」の本質的な意味の違い
- シーン別・目的別の正しい選び方
- プロが指摘する間違いやすいポイント
- すぐに使えるビジネスメールの例文集
基本的な意味の違い
「ご連絡」と「お知らせ」は、ビジネスコミュニケーションで頻繁に使われる表現ですが、その意味合いと使用状況には明確な違いがあります。
「ご連絡」の基本的な意味
「ご連絡」は「連絡」に丁寧語の接頭辞「ご」をつけた言葉で、双方向のコミュニケーションを意味する傾向があります。
「つながりを持つ」「接触する」というニュアンスを含みます。
ご連絡の特徴:
- 双方向性を含む伝達
- 返信や応答を期待するケースが多い
- 継続的なやり取りの一部
- やや個人的・直接的な印象
「お知らせ」の基本的な意味
「お知らせ」は「知らせる」に丁寧語の接頭辞「お」をつけた言葉で、一方的な情報提供を意味します。
情報を相手に伝達する行為に重点を置いています。
お知らせの特徴:
- 一方向性の伝達
- 単純な情報提供
- 返信を必ずしも必要としない
- 公式・フォーマルな印象
比較表
項目 | ご連絡 | お知らせ |
---|---|---|
方向性 | 双方向的 | 一方向的 |
返信の期待 | 期待する傾向 | 必ずしも期待しない |
情報の種類 | 個別的・特定的 | 一般的・公式的 |
フォーマル度 | やや個人的 | より公式的 |
使用例 | 「明日の予定についてご連絡します」 | 「休業日についてお知らせします」 |
使い分けのポイント
「ご連絡」と「お知らせ」を状況に応じて適切に使い分けるためのポイントを解説します。
目的による使い分け
「ご連絡」を使うべき場面
- 個別の案件に関する伝達:「ご依頼の件についてご連絡いたします」
- 返信を求める場合:「ご都合をご連絡ください」
- 前後のやり取りがある場合:「先日のご連絡に関して」
「お知らせ」を使うべき場面
- 一般的な情報提供:「営業時間変更のお知らせ」
- 公式な通知:「人事異動のお知らせ」
- 不特定多数向けの連絡:「サービス停止のお知らせ」
相手別の使い分け
取引先・顧客向け
- 個別の取引に関すること→「ご連絡」:「お見積りについてご連絡いたします」
- 全体に向けた情報→「お知らせ」:「年末年始の営業についてお知らせいたします」
社内向け
- 特定の部署・個人向け→「ご連絡」:「プロジェクト進捗についてご連絡いたします」
- 全社向け→「お知らせ」:「新システム導入のお知らせ」
内容の性質による使い分け
緊急性による違い
- 緊急性が高い→「ご連絡」:「納期変更についてご連絡いたします」
- 一般的な情報→「お知らせ」:「新商品情報のお知らせ」
プライベート度による違い
- 個人的な内容→「ご連絡」:「休暇申請についてご連絡いたします」
- 公的な内容→「お知らせ」:「事務所移転のお知らせ」
よくある間違いと誤用例
「ご連絡」と「お知らせ」の誤用例と正しい使い方を紹介します。
「お知らせ」を使うべき場面で「ご連絡」を使う誤り
🚫 誤用例: 「年末年始休業期間について、全取引先様にご連絡いたします」
✅ 正しい例: 「年末年始休業期間について、全取引先様にお知らせいたします」
解説
不特定多数に向けた一方的な情報提供は「お知らせ」が適切です。
「ご連絡」は個別性が強いため、全体向けの公式通知には適していません。
「ご連絡」を使うべき場面で「お知らせ」を使う誤り
🚫 誤用例: 「ご注文いただいた商品の発送日についてお知らせいたします。発送日をご確認の上、ご返信ください」
✅ 正しい例: 「ご注文いただいた商品の発送日についてご連絡いたします。発送日をご確認の上、ご返信ください」
解説
個別の案件で返信を求める場合は「ご連絡」が適切です。
双方向のコミュニケーションを期待する際には「ご連絡」を使いましょう。
タイトルと本文での不一致
🚫 誤用例: タイトル:「新サービス開始のご連絡」 本文:「弊社では新サービスを開始いたしますので、ここにお知らせいたします」
✅ 正しい例: タイトル:「新サービス開始のお知らせ」 本文:「弊社では新サービスを開始いたしますので、ここにお知らせいたします」
解説
タイトルと本文で使用する表現は一致させましょう。
一般的な情報提供の場合は「お知らせ」で統一するのが適切です。
「ご連絡」「お知らせ」の後の動詞選択の誤り
🚫 誤用例: 「明日の会議についてご連絡します」(何をするのか不明確)
✅ 正しい例: 「明日の会議について変更がございますので、ご連絡いたします」または 「明日の会議の開始時間を30分遅らせることをご連絡いたします」
解説
「ご連絡」「お知らせ」の後には、何を連絡・知らせるのかを明確にすると文章が洗練されます。
実践的な例文集
実際のビジネスシーンで使える「ご連絡」と「お知らせ」の例文を紹介します。
「ご連絡」の例文
納期変更のご連絡
「先日ご注文いただきました商品につきまして、納期変更のご連絡を申し上げます。
誠に恐れ入りますが、納期を5月15日から5月20日に変更させていただきたく存じます。
何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。」
面接日程のご連絡
「先日ご応募いただきました弊社採用選考につきまして、面接日程のご連絡をいたします。
つきましては、下記の日時にてご面談させていただきたく存じます。
候補日:2025年5月25日(月)14:00~/5月26日(火)10:00~
場所:弊社本社ビル5階会議室
ご都合のよろしい日時を5月15日までにご連絡いただけますと幸いです。」
担当者変更のご連絡
「平素は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。
このたび人事異動に伴い、○○様の担当が下記の通り変更となりましたので、ご連絡申し上げます。
旧担当:営業部 山田太郎
新担当:営業部 佐藤花子(5月15日より)
今後とも変わらぬお引き立てを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。」
「お知らせ」の例文
新システム導入のお知らせ
「平素より弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
このたび、お客様により快適にサービスをご利用いただくため、新システムを導入することをお知らせいたします。
導入日:2025年6月1日(月)
新機能:
・モバイル対応の強化
・セキュリティ機能の向上
・操作性の改善」
事務所移転のお知らせ
「拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、弊社ではこのたび業務拡大に伴い、下記の通り事務所を移転することになりましたので、お知らせ申し上げます。
移転日:2025年7月1日(火)
新住所:〒100-0001 東京都千代田区千代田1-1-1 千代田ビル5階
電話番号:03-1234-5678(変更なし)」
価格改定のお知らせ
「平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
誠に恐縮ではございますが、原材料価格の高騰により、2025年8月1日より下記のとおり価格を改定させていただくことをお知らせいたします。
改定日:2025年8月1日(金)
対象商品:全商品(詳細は別紙をご参照ください)
改定率:平均10%増」
「ご連絡」と「お知らせ」の使い分け例
会議日程変更(個別向け)
「山田様
先日ご案内いたしました5月20日の会議につきまして、日程変更のご連絡をいたします。
都合により、5月22日14:00からに変更させていただきたく存じます。
ご都合いかがでしょうか。
5月15日までにご返信いただけますと幸いです。」
会議日程変更(全体向け)
「関係者各位
先日ご案内いたしました5月20日の全体会議につきまして、日程変更のお知らせをいたします。
都合により、5月22日14:00からに変更となりました。
皆様のご参加をお願いいたします。」
言葉の背景と使用傾向
「ご連絡」と「お知らせ」の歴史的背景と現代での使用傾向を理解しましょう。
言葉の成り立ちと歴史
「ご連絡」の語源と変遷
「連絡」は「連ねてつなぐ」という意味を持ち、古くから「複数の物事をつなぐ」という意味で使われてきました。
ビジネス用語としては明治時代以降に広まり、現代では双方向のコミュニケーションを示す言葉として定着しています。
「お知らせ」の語源と変遷
「知らせ」は「知る」からきた言葉で、相手に情報を与えるという意味を持ちます。
日本古来の和語であり、「お」という接頭辞が付いた丁寧な形は、江戸時代には既に使われていました。
ビジネス文書における使用傾向の変化
デジタル化の影響
- メール文化の普及により、より明確な使い分けが求められるようになった
- Webサイトでは「お知らせ」が情報カテゴリとして定着
- SNSの普及により、よりカジュアルな表現が増加傾向
業界別の使用傾向
金融・保険業界
- 正確さを重視し、明確な使い分けを好む傾向
- 「お知らせ」は公式通知に、「ご連絡」は個別案件に限定
IT・通信業界
- やや柔軟な使い分け
- 「お知らせ」をシステム通知に多用
官公庁・公共機関
- 「お知らせ」を公式発表に使用
- 「ご連絡」は個別対応に限定
世代による使い方の違い
若い世代ほど「ご連絡」と「お知らせ」の境界が曖昧になる傾向がありますが、ビジネス上では正確な使い分けがプロフェッショナルな印象を与えます。
まとめ
「ご連絡」と「お知らせ」は似ているようで異なる用途を持つ表現です。
適切な使い分けで、より洗練されたビジネスコミュニケーションを実現しましょう。
覚えておきたいポイント
- 「ご連絡」は双方向性があり、個別的な情報伝達に適している
- 「お知らせ」は一方向性で、一般的・公式的な情報提供に適している
- 情報の性質、相手との関係性、返信の必要性に応じて使い分ける
- タイトルと本文で表現を一致させる
- 何を伝えるのかを明確にし、適切な動詞と組み合わせる
ビジネスメールや文書で「ご連絡」と「お知らせ」を適切に使い分けることで、プロフェッショナルな印象を与え、相手に正確に意図を伝えることができます。
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よくある質問(FAQ)
Q1: 「ご連絡」と「ご報告」の違いは何ですか?
A: 「ご連絡」は幅広い情報伝達を指し、「ご報告」は特定の案件や業務の結果・進捗を伝える場合に使用します。
「ご報告」には「任せられた事柄の結果を伝える」というニュアンスがあり、責任や義務の要素を含む傾向があります。
例えば、「プロジェクトの進捗をご報告します」は具体的な業務の状況を伝える場合、「明日の会議の開始時間変更についてご連絡します」は単に情報を伝える場合に適しています。
【関連記事】「ご連絡」「ご報告」「ご案内」の違いと使い分け【情報伝達の適切な表現】
Q2: メールの件名では「ご連絡」と「お知らせ」をどう使い分けるべきですか?
A: メールの件名では、内容に応じて使い分けるのが適切です。
個別の案件で返信を求める場合は「○○についてのご連絡」、一般的な情報提供で返信を必要としない場合は「○○のお知らせ」とするのがよいでしょう。
例えば、「納期変更についてのご連絡(ご確認ください)」は返信を求める場合、「5月度休業日のお知らせ」は単なる情報提供の場合に適しています。
また、件名は簡潔に内容が伝わるよう心がけましょう。
Q3: 社内と社外で使い分けるべきですか?
A: 基本的な使い分けのルールは社内・社外で共通ですが、社内ではややカジュアルに、社外ではより丁寧に表現する傾向があります。
社内向けでも公式な全体通知は「お知らせ」を使い、個別の連絡事項は「ご連絡」を使うとよいでしょう。
社外向けでは特に正確な使い分けを心がけ、相手の立場や案件の性質を考慮して選択することが重要です。
Q4: 「ご連絡」「お知らせ」の後に続く適切な敬語表現は何ですか?
A: 「ご連絡」「お知らせ」の後には、適切な敬語表現を続けるとより丁寧になります。
- 「ご連絡いたします」「ご連絡申し上げます」(より丁寧)
- 「お知らせいたします」「お知らせ申し上げます」(より丁寧)
丁寧さのレベルは、相手との関係性や文書の重要度によって選択するとよいでしょう。
特に重要な取引先や上司に対しては「申し上げます」を使うことで、より敬意を示すことができます。
Q5: 「ご連絡」「お知らせ」に代わる他の表現はありますか?
A: 状況や文脈によって、以下のような代替表現も使用できます。
- 「ご連絡」の代わりに:「ご報告」(結果を伝える)、「お伝え」(情報共有)
- 「お知らせ」の代わりに:「ご案内」(行動を促す)、「お届け」(情報を届ける)
これらの表現も、使用状況や目的に応じて適切に選択することが重要です。
例えば、セミナーについて参加を促したい場合は「セミナー開催のご案内」が「お知らせ」よりも適切です。