日本語の接続語「なお」の誤用パターンと適切な使い方
ビジネス文書やレポートを書く際、補足情報を追加するために「なお」という接続語をよく使うことがあります。
しかし、この便利な言葉も使い方を間違えると、文章が不自然になったり、意図しない意味が伝わったりすることがあります。
実は「なお」の誤用は日本語ネイティブでも気づかないうちにしてしまうケースが多いのです。
本記事では、「なお」の誤用パターンと正しい使い方を実例と対比で解説します。
この記事を読めば、より自然で読みやすい文章表現が身につくでしょう。
この記事でわかること
- 「なお」の本来の意味と正しい使用法
- 間違った使い方のベスト5と改善例
- 文章をチェックする際のポイント
- 「なお」を効果的に使うためのテクニック
「なお」の正しい意味と使い方
「なお」は主に「補足情報の追加」や「前の内容に関連する別の情報の提示」を意味する接続語です。
文脈上、本題とは別に伝えたい情報がある場合や、前述した内容に付け加えたい事項がある場合に使用します。
「なお」の正しい使用場面
- 補足情報の提示 例:「会議は10時から始まります。なお、資料は事前に配布しております。」
- 注意事項の追加 例:「申込期限は今週金曜日です。なお、一度提出した書類は返却できません。」
- 条件や状況の補足 例:「商品の発送は来週月曜日の予定です。なお、天候により遅延する場合があります。」
「なお」は情報を追加する便利な接続語ですが、使い方を誤ると文章全体の流れを損ねてしまいます。
次では、よくある誤用パターンと改善例を見ていきましょう。
よくある誤用パターンベスト5
使いすぎによる冗長さ 🚫
文章の中で「なお」を何度も使うと、冗長になり読みにくくなります。
🚫 誤用例
「明日の会議は10時からです。なお、資料は事前に配布します。なお、質問がある場合は事前にメールでお知らせください。なお、会議室は先週と同じ6階のA会議室です。」
✅ 改善例
「明日の会議は10時からです。資料は事前に配布します。また、質問がある場合は事前にメールでお知らせください。会議室は先週と同じ6階のA会議室です。」
ポイント
「なお」を別の接続語(「また」「さらに」「加えて」など)に置き換えるか、単純に省略することで文章の流れが良くなります。
論理的につながらない文脈での使用 🚫
「なお」は補足情報を追加する接続語です。
前の文と論理的なつながりがない場合は使うべきではありません。
🚫 誤用例
「明日は雨の予報です。なお、傘を持ってきてください。」
✅ 改善例
「明日は雨の予報です。そのため、傘を持ってきてください。」
(または)
「明日は雨の予報です。傘を持ってきてください。」
ポイント
因果関係がある場合は「そのため」「したがって」などの接続語を使用するか、つながりが明らかな場合は接続語を省略します。
強調や命令に「なお」を使う 🚫
「なお」は強調や命令を表す接続語ではありません。
こうした意図での使用は不自然です。
🚫 誤用例
「なお、期限厳守でお願いします。」
✅ 改善例
「期限は厳守でお願いします。」
(または)
「特に、期限は厳守でお願いします。」
ポイント
強調したい場合は「特に」「何より」などの表現を使うか、単に強調したい内容を独立した文にします。
対比関係に「なお」を使う 🚫
前後の文が対比関係にある場合、「なお」ではなく「しかし」「一方」などを使います。
🚫 誤用例
「Aプランはコストパフォーマンスが高いです。なお、Bプランは機能が充実しています。」
✅ 改善例
「Aプランはコストパフォーマンスが高いです。一方、Bプランは機能が充実しています。」
ポイント
対比関係を示す場合は「一方」「他方」「しかし」「ただし」などの接続語が適切です。
文頭での不適切な使用 🚫
段落の冒頭や文章の最初に「なお」を使うのは不自然です。
「なお」は前の内容を受けて補足するものだからです。
🚫 誤用例
「【メール冒頭】なお、先日お問い合わせいただいた件についてご連絡いたします。」
✅ 改善例
「先日お問い合わせいただいた件についてご連絡いたします。」
ポイント
文章や段落の冒頭では「なお」を使わず、直接本題に入るか、別の接続語(「さて」「拝啓」など)を使用します。
「なお」の使い方をチェックするポイント
頻度チェック
同じ文章内で「なお」が複数回出てきていないか確認しましょう。
目安として、1つの文書で「なお」は最大2〜3回までにとどめるのが良いでしょう。
チェック方法
- 文書内で「なお」を検索し、出現回数をカウントする
- 複数回使われている場合は、別の表現に言い換える
文脈チェック
「なお」の前後の文脈を確認し、本当に補足情報として適切かどうかを判断します。
チェックすべき3つの視点
- 補足関係: 前の内容に対する補足情報になっているか
- 論理的整合性: 前の文と論理的につながりがあるか
- 必要性: 「なお」を使わずに表現できないか
代替表現の検討
「なお」を使おうとしているとき、他の接続語の方が適切ではないか考えてみましょう。
状況別の適切な接続語
- 単純な追加 → 「また」「そして」「加えて」
- 対比関係 → 「一方」「ただし」「しかし」
- 因果関係 → 「そのため」「したがって」
- 話題転換 → 「ところで」「さて」
書き換え演習コーナー
下記の文章の中から不自然な「なお」の使い方を見つけて、より適切な表現に書き換えてみましょう。
例題1
🚫 不自然な文
「会議の日程は来週水曜日です。なお、全員参加してください。」
✅ 改善例
「会議の日程は来週水曜日です。全員参加をお願いします。」
ポイント
命令や依頼に「なお」は不要です。
単純に伝えたい内容を述べるだけで十分です。
例題2
🚫 不自然な文
「なお、以下の書類を提出してください。」
✅ 改善例
「以下の書類を提出してください。」
(または)
「また、以下の書類を提出してください。」
ポイント
文頭や段落の冒頭で「なお」を使うのは避けましょう。
他の接続語を使うか、省略します。
例題3
🚫 不自然な文
「プロジェクトAは成功しました。なお、プロジェクトBは失敗しました。」
✅ 改善例
「プロジェクトAは成功しました。一方、プロジェクトBは失敗しました。」
ポイント
対比関係を示す場合は「一方」「しかし」などを使います。
例題4
🚫 不自然な文
「明日は雨です。なお、今日は晴れです。」
✅ 改善例
「明日は雨です。ちなみに、今日は晴れです。」
ポイント
関連性の弱い情報を付け加える場合は「ちなみに」「余談ですが」などが適切です。
例題5
🚫 不自然な文
「締切は金曜日です。なお、早めの提出にご協力ください。なお、提出先は総務部です。なお、質問があれば担当者までお問い合わせください。」
✅ 改善例
「締切は金曜日です。早めの提出にご協力ください。提出先は総務部です。また、質問があれば担当者までお問い合わせください。」
ポイント
複数の「なお」を使う代わりに、一部を省略するか、別の接続語(「また」「さらに」など)に置き換えます。
「これだけ覚えればOK」なチェックリスト
「なお」を使うべき場面
✓ 前述した内容に対する補足情報を追加する場合
✓ 本題とは別に伝えたい追加情報がある場合
✓ 注意事項や例外事項を付け加える場合
「なお」を避けるべき場面
✓ 命令や依頼を伝える場合
✓ 対比関係を示す場合
✓ 因果関係を示す場合
✓ 文書や段落の冒頭
✓ 前の文と論理的なつながりがない場合
「なお」の使用頻度
✓ 同じ段落内で複数回使わない
✓ 1つの文書で2〜3回程度を目安にする
✓ 使いすぎると読みにくくなることを認識する
「なお」の歴史と語源
「なお」は古くから日本語で使われてきた接続語で、元々は「猶(なお)」という漢字で表記されていました。
「猶」には「まだ」「依然として」という意味があり、現代の「なお」の用法はここから派生したものです。
江戸時代頃から徐々に補足を示す接続語として使われるようになり、現代では主に文書やビジネス文章での補足表現として定着しています。
興味深いことに、会話ではあまり使われず、主に書き言葉で使用される傾向があります。
また、「なお」の類語である「また」「さらに」などと比べると、「なお」はやや形式的で硬い印象を与えることがあります。
このため、カジュアルな文章では「ちなみに」や「それから」などが好まれる傾向があります。
まとめ
「なお」は便利な接続語ですが、使い方を誤ると文章が不自然になってしまいます。
本記事で紹介した誤用パターンとチェックポイントを意識することで、より読みやすく自然な文章が書けるようになるでしょう。
この記事のポイント
- 「なお」は補足情報を追加するための接続語
- 使いすぎや文脈に合わない使用は避ける
- 状況に応じて適切な接続語を選ぶ
- 文章を読み返す際に「なお」の使用をチェックする
以上のポイントを意識するだけで、文章の質は格段に向上します。
「なお」の適切な使用法を身につけて、より洗練された文章表現を目指しましょう。
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よくある質問
Q1: 「なお」と「また」の違いは何ですか?
A: 「なお」は主に補足情報や注意事項を追加するときに使い、やや形式的な印象があります。
一方、「また」はより汎用的で、単純な情報の追加や並列の関係を示すときに使います。
「また」の方がカジュアルな場面でも使いやすい傾向があります。
Q2: ビジネスメールでの「なお」の使い方で注意すべき点は?
A: ビジネスメールでは「なお」を使いすぎないことが重要です。
特に短いメールで複数回使うと冗長に感じられます。
また、メールの冒頭では使わず、本題を述べた後の補足情報として使用しましょう。
Q3: 「なお」の代わりに使える丁寧な表現はありますか?
A: 「加えてお知らせいたします」「併せてご案内いたします」「補足情報として」などがビジネスシーンでは丁寧な印象を与えます。
状況に応じて使い分けると良いでしょう。