メールや会話で「お伝えします」と「ご連絡します」、どちらが適切か迷うことはありませんか?
この2つの表現は似ているようで、使うべき場面やニュアンスに重要な違いがあります。
この記事では、それぞれの本来の意味と正しい使い分け方を解説します。
この記事でわかること
- 「お伝えします」と「ご連絡します」の意味と敬語レベルの違い
- 相手との関係性や伝達内容による使い分けのポイント
- 誤用しやすい状況と正しい言い換え表現
- 敬語レベル別の実践例文30選
基本的な意味の違い
「お伝えします」と「ご連絡します」は、どちらも情報を相手に伝える行為を表す敬語表現ですが、それぞれニュアンスと適切な使用場面が異なります。
「お伝えします」の基本的な意味
「お伝えします」は「伝える」に「お〜します」という丁寧な表現を加えた言葉で、特定の情報や内容を相手に届ける意味合いを持ちます。
お伝えしますの特徴:
- 特定の内容を直接的に伝える
- やや簡潔で明確な印象
- 一方通行的な情報伝達
- 単発的な伝達に適している
「ご連絡します」の基本的な意味
「ご連絡します」は「連絡」に「ご〜します」という丁寧な表現を加えた言葉で、双方向のコミュニケーションの一部として情報をやり取りする意味合いを持ちます。
ご連絡しますの特徴:
- 複数の情報を含むことが多い
- 継続的なやり取りの一部
- 双方向のコミュニケーションを想定
- 返信や応答を期待することが多い
敬語レベルの違い
敬語としてのレベルにも微妙な違いがあります。
表現 | 敬語のタイプ | 丁寧さのレベル | 適切な使用場面 |
---|---|---|---|
お伝えします | 丁寧語+謙譲語 | 標準的な丁寧さ | 一般的なビジネスシーン |
ご連絡します | 丁寧語+謙譲語 | 標準的な丁寧さ | 一般的なビジネスシーン |
お伝え申し上げます | 丁寧語+謙譲語 | より丁寧 | 重要な取引先・上司など |
ご連絡申し上げます | 丁寧語+謙譲語 | より丁寧 | 重要な取引先・上司など |
どちらも基本的な丁寧さのレベルは同等ですが、使われる状況によって適切な選択が異なります。
比較表
項目 | お伝えします | ご連絡します |
---|---|---|
情報の種類 | 特定・具体的な内容 | 複数の要素を含むことが多い |
伝達の方向性 | より一方向的 | より双方向的 |
返信の期待 | 低〜中程度 | 中〜高程度 |
コミュニケーションの継続性 | 単発的 | 継続的なやり取りの一部 |
使用例 | 「会議の日程変更をお伝えします」 | 「見積もりについてご連絡します」 |
使い分けのポイント
「お伝えします」と「ご連絡します」を状況に応じて適切に使い分けるためのポイントを解説します。
情報の性質による使い分け
「お伝えします」が適切な場面
- 単一の具体的な情報:「会議の開始時間が10時に変更になったことをお伝えします」
- 明確なメッセージ:「社長からのメッセージをお伝えします」
- 直接的な言葉の引用:「田中様のお言葉をそのままお伝えします」
「ご連絡します」が適切な場面
- 複数の情報を含む場合:「プロジェクトの進捗状況についてご連絡します」
- 今後の予定や段取り:「今後のスケジュールについてご連絡します」
- 継続的なやり取りの一部:「先日のお問い合わせについてご連絡します」
相手との関係性による使い分け
社内・同僚向け
より気軽な印象の「お伝えします」を使うことが多い
例:「部内の異動についてお伝えします」
社外・取引先向け
より丁寧で公式的な「ご連絡します」を使う傾向
例:「契約内容の変更点についてご連絡します」
上司・重要な取引先向け
より丁寧な「お伝え申し上げます」「ご連絡申し上げます」を使用
例:「社長からのご指示を皆様にお伝え申し上げます」
媒体による使い分け
口頭での伝達
「お伝えします」の方が自然に響くことが多い
例:「山田部長からのメッセージをお伝えします」
文書・メールでの伝達
「ご連絡します」がよく使われる
例:「本件につきまして、詳細をご連絡します」
状況による使い分け
緊急性が高い場合
「お伝えします」をよく使用(直接的ですぐに伝わる印象)
例:「システム障害の発生をお伝えします」
正式・公式な場合
「ご連絡します」または「ご連絡申し上げます」を好む傾向
例:「弊社の新体制についてご連絡申し上げます」
よくある間違いと誤用例
「お伝えします」と「ご連絡します」の誤用例と正しい使い方を紹介します。
内容と表現のミスマッチ
🚫 誤用例: 「細かな打ち合わせ内容を全てお伝えします」(大量の情報に「お伝えします」は不適切)
✅ 正しい例: 「細かな打ち合わせ内容を全てご連絡します」
解説
複数の内容や詳細な情報を伝える場合は「ご連絡します」が適切です。
「お伝えします」は単一または簡潔な情報に向いています。
双方向のやり取りが必要な場面での誤り
🚫 誤用例: 「ご質問への回答をお伝えしますので、ご確認の上、再度ご連絡ください」
✅ 正しい例: 「ご質問への回答をご連絡しますので、ご確認の上、再度ご連絡ください」
解説
返信を求める双方向のコミュニケーションには「ご連絡します」が適切です。
敬語レベルの不適切な選択
🚫 誤用例: 「取締役会の決定事項をお伝えします」(重要な公式通知に対してやや軽い印象)
✅ 正しい例: 「取締役会の決定事項をご連絡申し上げます」
解説
重要な公式通知には、より丁寧な「ご連絡申し上げます」が適切です。
表現の冗長な使用
🚫 誤用例: 「お知らせとしてお伝えしご連絡申し上げます」
✅ 正しい例: 「お知らせいたします」または「ご連絡申し上げます」
解説
類似表現を重ねることは冗長で不自然です。
内容に最も適した一つの表現を選びましょう。
実践的な例文集
ビジネスシーンで使える「お伝えします」と「ご連絡します」の例文を紹介します。
標準的な丁寧さの例文
「お伝えします」の例文
会議日程の変更
「明日の会議は10時から11時に変更になったことをお伝えします。」
上司からのメッセージ
「部長より、予定通り計画を進めるようにとのことをお伝えします。」
社内イベントの中止
「悪天候のため、明日の社内バーベキューは中止となりましたことをお伝えします。」
来客の到着
「山田様がお見えになりましたので、お伝えします。」
単純な事実通知
「新しいコピー機が明日納品されることをお伝えします。」
「ご連絡します」の例文
プロジェクト進捗報告
「現在のプロジェクト進捗状況についてご連絡します。現在第2フェーズを予定通り進行中で、来週中に完了する見込みです。」
複数の情報を含む通知
「明日の会議について以下の内容をご連絡します。
- 開始時間:14:00
- 場所:本社5階会議室
- 議題:第3四半期の業績報告
- 持ち物:先日配布した資料」
返信を求める連絡
「見積書の内容についてご連絡します。ご確認の上、ご質問や修正点がございましたら、明日中にご返信ください。」
継続的なやり取りの一部
「先日ご相談いただいた件について調査結果をご連絡します。さらに詳しい情報が必要でしたら、お申し付けください。」
今後の予定連絡
「来月のスケジュールについてご連絡します。第1週と第3週に定例会議、第4週に臨時会議を予定しております。」
より丁寧な敬語レベルの例文
「お伝え申し上げます」の例文
社長からの伝言
「社長より、本プロジェクトの成功に対して心からの感謝の意をお伝え申し上げます。」
取引先への重要情報
「新製品の発売日が6月15日に決定したことをお伝え申し上げます。」
お詫びの言葉
「先日の対応における不手際について、心よりお詫び申し上げますことをお伝え申し上げます。」
公式な発表
「新経営体制について、本日付で以下の通り決定いたしましたことをお伝え申し上げます。」
感謝の意
「長年のお取引に対する感謝の意をお伝え申し上げます。」
「ご連絡申し上げます」の例文
正式な案内
「弊社創立50周年記念式典の詳細について、下記の通りご連絡申し上げます。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。」
重要な取引に関する連絡
「先日ご検討いただいておりました契約内容について、弊社の最終提案をご連絡申し上げます。」
公式なお詫び
「システム障害によりご迷惑をおかけしたことにつきまして、原因と対策をご連絡申し上げます。」
正式な回答
「お問い合わせいただきました件につきまして、社内で検討した結果をご連絡申し上げます。」
重要な変更通知
「来月より適用される新料金体系について、詳細をご連絡申し上げます。」
シーン別特化例文
メール冒頭での使い方
お伝えします
「お世話になっております。先日ご依頼いただいた資料の完成をお伝えします。」
ご連絡します
「平素よりお世話になっております。先日のお打ち合わせでご要望いただいた点について検討結果をご連絡します。」
電話での使い方
お伝えします
「お電話ありがとうございます。田中様からのメッセージをお伝えします。」
ご連絡します
「この度はお問い合わせいただき、ありがとうございます。ご注文状況についてご連絡します。」
会議・打ち合わせでの使い方
お伝えします
「会議の前に、部長からのメッセージをお伝えします。」
ご連絡します
「会議の冒頭で、先週からの進捗状況についてご連絡します。」
日本語コミュニケーションにおける微妙なニュアンス
「お伝えします」と「ご連絡します」の微妙なニュアンスの違いと、日本語コミュニケーションにおける重要性を解説します。
相手への印象の違い
「お伝えします」が与える印象
- より直接的でシンプル
- 明確さと簡潔さを重視
- やや気軽で親しみやすい印象
- メッセージの伝達を重視
「ご連絡します」が与える印象
- より丁寧でフォーマル
- 詳細と網羅性を重視
- やや距離感のある公式的な印象
- 関係性の継続を重視
業界・組織文化による違い
伝統的な業界(金融・法律など)
- より正式な「ご連絡申し上げます」を好む傾向
- 文書での表現を重視
新興業界(IT・クリエイティブなど)
- より簡潔な「お伝えします」を好む傾向
- 対話やコミュニケーションの効率性を重視
地域による言葉遣いの違い
日本の地域によって、微妙な敬語の使い方に差があります。
- 関東地方:比較的形式を重視し、「ご連絡します」をフォーマルな場で多用
- 関西地方:コミュニケーションの柔軟性を重視し、場面によって使い分ける傾向
時代による変化
- 昭和時代:厳格な敬語使用が重視され、「ご連絡申し上げます」など重厚な表現が好まれた
- 平成時代:簡略化が進み、「お伝えします」「ご連絡します」の使用頻度が増加
- 令和時代:デジタルコミュニケーションの普及により、より簡潔で明確な表現が重視される傾向
対面・非対面による違い
- 対面コミュニケーション:「お伝えします」が自然に使われることが多い
- メール・文書:「ご連絡します」がより適切とされる傾向
- オンライン会議:対面とメールの中間的な性質を持ち、状況に応じた使い分けが必要
まとめ
「お伝えします」と「ご連絡します」は、一見似ているようで使うべき場面が異なる表現です。
適切に使い分けることで、ビジネスコミュニケーションの質を高めることができます。
覚えておきたいポイント
- 「お伝えします」は特定の情報を直接的に伝える場合に適している
- 「ご連絡します」は複数の情報や継続的なやり取りを含む場合に適している
- 情報の性質、相手との関係性、伝達媒体によって使い分ける
- 重要度や公式性に応じて「お伝え申し上げます」「ご連絡申し上げます」などのより丁寧な表現を選択する
- 業界や組織文化によって好まれる表現が異なる場合がある
適切な表現を選ぶことで、相手に対する敬意を示すとともに、伝えたい内容を最も効果的に届けることができます。
状況に応じた使い分けを意識して、より円滑なビジネスコミュニケーションを実現しましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q1: 「お伝えください」と「ご連絡ください」はどう使い分けるべきですか?
A: 「お伝えください」は特定のメッセージや情報を直接的に伝えてほしい場合に適しています。
例えば「会議に参加できないことを部長にお伝えください」のように使います。
一方、「ご連絡ください」はより幅広い情報やフィードバックを求める場合に適しています。
例えば「ご都合のよい日時をご連絡ください」のように使います。
「お伝えください」は一方向の特定情報、「ご連絡ください」は双方向のコミュニケーションを想定する傾向があります。
Q2: 「お伝え」「ご連絡」の前に「ご」をつけるのは正しいですか?
A: 「ご連絡」は正しい敬語ですが、「ごお伝え」とするのは誤りです。
「お伝え」は「伝える」という動詞に「お」という接頭辞がついた形で、さらに「ご」をつけると二重敬語になってしまいます。
一方「連絡」は名詞なので「ご連絡」という形が正しい敬語表現になります。
このように品詞によって接頭辞の付け方が異なることに注意しましょう。
Q3: 海外の取引先とのメールでも同じように使い分けるべきですか?
A: 海外の取引先に日本語でメールを送る場合は、相手の日本語理解レベルに合わせて表現を選ぶとよいでしょう。
日本語に慣れていない相手には、より単純で直接的な「お伝えします」の方が理解されやすい傾向があります。
英語でのメールの場合は、「お伝えします」は “I would like to inform you” や “I’m letting you know”、「ご連絡します」は “I would like to communicate” や “I’m contacting you regarding” などと訳すことができますが、英語ではこの区別はそれほど重要ではありません。
Q4: 上司や目上の人に使う場合、より丁寧な表現はありますか?
A: 上司や特に重要な取引先などには、より丁寧な表現として「お伝え申し上げます」「ご連絡申し上げます」を使うとよいでしょう。
特に格式高い文書や公式な場面では「ご連絡申し上げます」が適しています。
また、「お知らせ申し上げます」「ご案内申し上げます」など、状況に応じた他の丁寧な表現も使い分けるとよいでしょう。
Q5: 「お伝えする」と「お伝えいたします」の違いは何ですか?
A: 「お伝えする」と「お伝えいたします」は敬語レベルが異なります。
「お伝えする」は基本的な丁寧表現ですが、「お伝えいたします」は「いたす」という謙譲語を使用しているためより丁寧な表現になります。
ビジネスシーンでは原則として「お伝えいたします」を使用するのが適切です。
さらに丁寧さを増したい場合は「お伝え申し上げます」を使うとよいでしょう。
場面や相手との関係性に応じて、適切な敬語レベルを選択することが重要です。
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