ビジネスコミュニケーションにおける「確認する」という行為は、単なる作業確認を超えて相手への敬意を示す重要な表現です。
適切な敬語を使うことで、相手との信頼関係を築き、円滑な業務進行を実現できます。
この記事では、「確認する」の敬語表現を体系的に解説し、場面に応じた正しい使い分け方法をお伝えします。
この記事を読めば、どんな相手に対しても適切な敬語で確認依頼ができるようになります。
「確認する」の基本的な敬語変換
敬語の3つの種類と「確認する」
敬語には「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類があり、それぞれ使用場面が異なります。
敬語の種類 | 基本的な考え方 | 「確認する」の表現 |
---|---|---|
尊敬語 | 相手の行為を高めて表現 | ご確認になる・ご確認いただく |
謙譲語 | 自分の行為を低めて表現 | 確認いたす・確認させていただく |
丁寧語 | 丁寧に表現する | 確認します・確認いたします |
基本変換ルール
相手が確認する場合(尊敬語)
- 「確認してください」→「ご確認ください」
- 「確認してもらう」→「ご確認いただく」
- 「確認される」→「ご確認になる」
自分が確認する場合(謙譲語)
- 「確認します」→「確認いたします」
- 「確認します」→「確認させていただきます」
丁寧に表現する場合(丁寧語)
- 「確認する」→「確認します」
- 「確認した」→「確認いたしました」
尊敬語での表現パターン
相手に確認をお願いする際に使用する尊敬語表現です。
基本的な尊敬語表現
ご確認ください
使用場面:一般的な確認依頼
例文:「資料の内容をご確認ください」
敬語レベル:中程度
ご確認いただけますでしょうか
使用場面:より丁寧な確認依頼
例文:「お時間のあるときにご確認いただけますでしょうか」
敬語レベル:高い
ご確認賜りますようお願い申し上げます
使用場面:最も丁寧な確認依頼
例文:「契約書の内容についてご確認賜りますようお願い申し上げます」
敬語レベル:最高レベル
尊敬語の応用表現
お目通しいただければ幸いです
意味:書類などを見て確認してもらう
使用場面:資料や文書の確認依頼
例文:「提案書にお目通しいただければ幸いです」
ご査収のほどよろしくお願いいたします
意味:内容を詳しく調べて受け取ってもらう
使用場面:重要書類の送付時
例文:「添付資料のご査収のほどよろしくお願いいたします」
ご検討いただけますと幸いです
意味:内容を検討・確認してもらう
使用場面:提案や企画の確認依頼
例文:「企画案をご検討いただけますと幸いです」
場面別尊敬語の選び方
相手との関係 | 推奨表現 | 使用例 |
---|---|---|
直属の上司 | ご確認いただけますでしょうか | 「進捗報告をご確認いただけますでしょうか」 |
役員・経営陣 | ご確認賜りますようお願い申し上げます | 「予算案をご確認賜りますようお願い申し上げます」 |
重要な取引先 | ご査収のほどよろしくお願いいたします | 「契約書のご査収のほどよろしくお願いいたします」 |
一般的な顧客 | ご確認くださいますようお願いいたします | 「注文内容をご確認くださいますようお願いいたします」 |
謙譲語での表現パターン
自分が確認する行為を表現する際に使用する謙譲語表現です。
基本的な謙譲語表現
確認いたします
使用場面:自分が確認することを伝える
例文:「内容を確認いたします」
特徴:簡潔で使いやすい表現
確認させていただきます
使用場面:相手の許可を得て確認する
例文:「資料を確認させていただきます」
特徴:より丁寧で配慮のある表現
拝見させていただきます
使用場面:書類や資料を見て確認する
例文:「提出いただいた書類を拝見させていただきます」
特徴:「見る」の謙譲語「拝見」を使用
謙譲語の使い分けポイント
「確認いたします」vs「確認させていただきます」
表現 | ニュアンス | 適用場面 |
---|---|---|
確認いたします | 単純な丁寧表現 | 一般的な業務確認 |
確認させていただきます | 相手への配慮を含む | 重要書類・相手の時間をいただく場合 |
例文比較:
- 「データを確認いたします」(一般的)
- 「お忙しい中、資料を確認させていただきます」(配慮あり)
謙譲語の応用表現
拝見いたします
意味:「見る」の謙譲語
使用場面:書類・資料の確認
例文:「契約書を拝見いたします」
注意:「拝見させていただきます」は二重敬語のため避ける
検討いたします
意味:よく考えて確認する
使用場面:提案や企画の内容確認
例文:「ご提案内容を検討いたします」
精査いたします
意味:詳しく調べて確認する
使用場面:重要な書類や数値の確認
例文:「見積書の内容を精査いたします」
丁寧語での表現パターン
最も基本的な丁寧表現で、日常的なビジネスシーンで使用します。
基本的な丁寧語表現
確認します
使用場面:一般的な業務連絡
例文:「スケジュールを確認します」
特徴:シンプルで分かりやすい
確認いたします
使用場面:やや丁寧な業務連絡
例文:「会議室の空き状況を確認いたします」
特徴:「いたします」により丁寧さが向上
確認しています
使用場面:進行中の確認作業を報告
例文:「現在、データを確認しています」
特徴:現在進行形で状況を表現
丁寧語の文脈での使い分け
状況 | 適切な表現 | 例文 |
---|---|---|
同僚への連絡 | 確認します | 「資料を確認します」 |
上司への報告 | 確認いたします | 「内容を確認いたします」 |
進捗の報告 | 確認しています | 「現在確認しています」 |
完了の報告 | 確認いたしました | 「先ほど確認いたしました」 |
相手別・場面別の使い分けルール
社内での使い分け
上司・先輩に対して
✅ 推奨表現
「ご確認いただけますでしょうか」
「お目通しいただければ幸いです」
「確認させていただきます」
❌ 避ける表現
「確認してください」
「見てください」
「チェックお願いします」
同僚に対して
✅ 推奨表現
「確認してもらえますか」
「確認をお願いします」
「確認いたします」
⚠️ 状況に応じて
関係性により敬語レベルを調整
部下に対して
✅ 推奨表現
「確認してください」
「内容を確認しておいてください」
「確認をお願いします」
⚠️ 注意点
命令調にならないよう配慮
社外での使い分け
重要な取引先・顧客
✅ 最高レベルの敬語
「ご確認賜りますようお願い申し上げます」
「ご査収のほどよろしくお願いいたします」
「お目通しいただければ幸いです」
重要な理由:
- 継続的な関係性の維持
- 信頼関係の構築
- ビジネス成果への影響
一般的な取引先
✅ 標準レベルの敬語
「ご確認いただけますでしょうか」
「ご確認くださいますようお願いいたします」
「内容をご確認ください」
初回取引先
✅ 丁寧レベルの敬語
「ご確認いただければ幸いです」
「お忙しい中恐縮ですが、ご確認ください」
初回の印象が重要なため、やや高めの敬語レベルを選択
文書の種類別使い分け
契約書・法的文書
推奨表現:「ご査収」「ご確認」
例:「契約書のご査収のほどよろしくお願いいたします」
理由:正式性と重要性を示すため
提案書・企画書
推奨表現:「ご検討」「お目通し」
例:「企画書にお目通しいただければ幸いです」
理由:内容の検討を促すため
報告書・データ
推奨表現:「ご確認」「拝見」
例:「月次報告書をご確認ください」
理由:事実確認が主目的のため
「確認」の類語との使い分け
ビジネスシーンでは「確認」以外にも類似の意味を持つ言葉があります。
適切な使い分けにより、より正確で洗練された表現が可能になります。
「確認」と「拝見」の違い
確認
意味:内容が正しいかどうかを調べること
使用場面:事実や数値の正確性をチェックする
例文:「データの数値を確認いたします」
ニュアンス:検証・照合の意味が強い
拝見
意味:「見る」の謙譲語
使用場面:書類や資料を見る行為全般
例文:「資料を拝見いたします」
ニュアンス:敬意を示しつつ「見る」ことを表現
使い分けの具体例:
- 「提出いただいた書類を拝見いたします」(まず見る)
- 「内容を確認いたします」(正確性をチェック)
「確認」と「チェック」の違い
確認
特徴:日本語として自然で丁寧
使用場面:正式な文書・メール
例文:「スケジュールを確認いたします」
印象:丁寧で品格がある
チェック
特徴:外来語でカジュアル
使用場面:社内の簡易的な連絡
例文:「データをチェックします」
印象:効率的だが軽い印象
場面別の選択基準:
- 正式な文書・重要な取引先:「確認」を選択
- 社内の簡易連絡・同僚間:「チェック」も可
「確認」と「検討」の違い
確認
目的:事実や正確性の確認
時間:比較的短時間
例文:「数値を確認いたします」
期待される行動:事実確認・照合
検討
目的:内容の評価・判断
時間:十分な時間が必要
例文:「提案内容を検討いたします」
期待される行動:分析・判断・決定
適切な使い分け:
- 「請求書の金額を確認します」(事実確認)
- 「新企画を検討します」(評価・判断)
「確認」と「精査」の違い
確認
レベル:基本的なチェック
用途:一般的な業務確認
例文:「会議の時間を確認します」
所要時間:短時間
精査
レベル:詳細で厳密な調査
用途:重要案件・複雑な内容
例文:「契約条件を精査いたします」
所要時間:十分な時間が必要
使い分けの判断基準:
- 重要度:高い場合は「精査」
- 複雑さ:複雑な場合は「精査」
- 影響度:大きい場合は「精査」
よくある敬語の誤用と正しい表現
誤用パターン1:敬語の使い方を間違える
❌ 誤った表現
「確認していただきます」
✅ 正しい表現
「ご確認いただけますでしょうか」
誤用の理由: 「〜していただきます」は相手に行動を強制する表現になり、失礼にあたります。
❌ 誤った表現
「ご確認させていただけますか」
✅ 正しい表現
「ご確認いただけますでしょうか」
誤用の理由: 「させていただく」は自分の行為に使う表現のため、相手の行為には使えません。
誤用パターン2:省略表現を使いすぎる
❌ 誤った表現(社外)
「確認お願いします」
✅ 正しい表現
「ご確認をお願いいたします」
問題点: 省略表現は社外では不適切で、敬意が不足します。
❌ 誤った表現(上司向け)
「チェックして」
✅ 正しい表現
「ご確認いただけますでしょうか」
問題点: カジュアルすぎて敬語として不十分です。
誤用パターン3:不適切な美化語を使う
❌ 誤った表現
「確認の方、お願いします」
✅ 正しい表現
「ご確認をお願いいたします」
問題点: 「〜の方」は不要な美化語で、却って不自然になります。
❌ 誤った表現
「確認のほう、していただいて」
✅ 正しい表現
「ご確認いただき」
問題点: 「ほう」の多用は冗長で品格を損ないます。
誤用パターン4:敬語レベルの不一致
❌ 誤った表現
「資料を見てご確認ください」
✅ 正しい表現
「資料をご覧いただき、ご確認ください」
問題点: 「見て」は敬語ではないため、「ご確認」と敬語レベルが不一致です。
二重敬語の注意点と回避方法
二重敬語は同じ語に敬語を重複して使用する誤用で、「確認」の表現でも注意が必要です。
よくある二重敬語の例
❌ 二重敬語:「ご確認していただく」
問題:「ご〜する」と「いただく」の敬語重複
正しい表現:「確認していただく」または「ご確認いただく」
❌ 二重敬語:「ご確認なさられる」
問題:「なさる」と「れる」の敬語重複
正しい表現:「ご確認なさる」または「確認される」
❌ 二重敬語:「拝見させていただきます」
問題:「拝見」と「させていただく」の敬語重複
正しい表現:「拝見いたします」または「見させていただきます」
二重敬語の回避方法
基本ルールの確認
✅ 一つの語には一つの敬語
❌ 同じ語に複数の敬語を使用しない
敬語の種類を統一
尊敬語を使う場合:「ご確認になる」
謙譲語を使う場合:「確認いたす」
混在させない:「ご確認いたす」は不適切
自然な日本語かどうかの確認
判断基準:声に出して読み、違和感がないか
違和感がある場合:敬語の使い方を見直す
正しい敬語変換の手順
Step 1:誰の行為かを明確にする
相手の行為 → 尊敬語を使用
自分の行為 → 謙譲語を使用
Step 2:適切な敬語形を選択する
相手の確認行為:
- ご確認ください
- ご確認いただく
- ご確認になる
自分の確認行為:
- 確認いたします
- 確認させていただきます
Step 3:文脈に応じた調整
相手との関係性:敬語レベルの調整
文書の重要性:表現の丁寧さの調整
緊急性:簡潔さとのバランス
場面別敬語選択の実践ガイド
メール冒頭での確認依頼
重要書類の場合
✅ 推奨表現
「添付いたします契約書につきまして、ご査収のほどよろしくお願い申し上げます」
ポイント:
- 「ご査収」で重要性を示す
- 「お願い申し上げます」で最高レベルの丁寧さ
一般的な資料の場合
✅ 推奨表現
「資料をお送りいたしますので、ご確認いただければ幸いです」
ポイント:
- 「ご確認」で標準的な敬語
- 「幸いです」で相手への配慮
会議での確認依頼
発言時の確認依頼
✅ 推奨表現
「資料の3ページをご確認ください」
「こちらの数値をご覧いただけますでしょうか」
ポイント:
- 簡潔で分かりやすい表現
- 参加者全体への配慮
電話での確認依頼
口頭での確認
✅ 推奨表現
「恐れ入りますが、お手元の資料をご確認いただけますでしょうか」
ポイント:
- 「恐れ入りますが」で配慮を示す
- 具体的な指示で分かりやすく
業界別・職種別の敬語使い分け
製造業での確認表現
品質管理関連
推奨表現:「検査結果をご確認ください」
理由:正確性と安全性が最重要のため
納期関連
推奨表現:「納期についてご確認いただけますでしょうか」
理由:相手の都合への配慮が重要のため
金融業での確認表現
契約関連
推奨表現:「契約内容のご確認を賜りますようお願い申し上げます」
理由:法的な重要性と信頼性が必要のため
数値関連
推奨表現:「計算結果をご査収ください」
理由:正確性の確認が不可欠のため
IT業界での確認表現
システム関連
推奨表現:「動作確認をお願いいたします」
理由:機能性の確認が主目的のため
仕様関連
推奨表現:「仕様書の内容をご検討ください」
理由:技術的な判断が必要のため
文書の格式に応じた敬語選択
正式文書での表現
契約書・覚書
✅ 最高レベルの敬語
「ご査収のほど、よろしくお願い申し上げます」
「ご確認賜りますよう、お願いいたします」
提案書・企画書
✅ 高レベルの敬語
「ご検討いただければ幸いです」
「お目通しいただけますと幸いです」
日常業務文書での表現
報告書・議事録
✅ 標準レベルの敬語
「内容をご確認ください」
「ご確認いただけますでしょうか」
連絡事項・通知
✅ 基本レベルの敬語
「ご確認をお願いいたします」
「確認してください」
まとめ:「確認する」敬語の完全習得
「確認する」の敬語表現は、ビジネスコミュニケーションの基礎となる重要なスキルです。
適切な使い分けにより、相手との信頼関係を築き、円滑な業務進行を実現できます。
敬語選択の基本原則
✅ 相手との関係性を最優先
- 上司・取引先には高いレベルの敬語
- 同僚・部下には適度なレベルの敬語
✅ 文書の重要性を考慮
- 契約書などの重要文書:最高レベル
- 日常的な連絡:標準レベル
✅ 場面の緊急性とのバランス
- 緊急時:簡潔さと丁寧さの両立
- 通常時:十分な敬語表現
✅ 自然な日本語であること
- 二重敬語の回避
- 過剰な敬語の避ける
実践のためのチェックポイント
□ 相手の立場に応じた敬語レベルの選択
□ 自分と相手の行為の区別(尊敬語・謙譲語)
□ 二重敬語の回避
□ 文脈に応じた適切な類語の選択
□ 自然で品格のある表現
継続的な向上のために
敬語は実際の使用を通じて身につくスキルです。
この記事の内容を参考に、日々のビジネスシーンで適切な「確認する」の敬語表現を実践し、より洗練されたコミュニケーション能力を身につけてください。
相手への敬意と配慮を込めた確認依頼により、ビジネス関係の質を高め、成果の向上につなげることができます。
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