ビジネスシーンで「承知しました」「了解です」「了承いたします」という表現を使い分けていますか?
これらの言葉は一見似ていますが、実は使うべき相手や場面が大きく異なります。
間違った使い方をすると、相手に失礼な印象を与えてしまう可能性があります。
この記事では、「承知」「了解」「了承」の意味の違いから、相手別・場面別の正しい使い分け方まで、豊富な例文とともに詳しく解説します。
この記事を読めば、どんな相手に対しても適切な敬語で返答できるようになります。
「承知」「了解」「了承」の基本的な違い
3つの言葉の根本的な違い
「承知」「了解」「了承」は、どれも相手の話を理解したことを示す言葉ですが、敬語レベルと使用場面が大きく異なります。
言葉 | 敬語の種類 | 使用相手 | 基本的な意味 |
---|---|---|---|
承知 | 謙譲語 | 目上→自分が使う | 事情を知り、聞き入れること |
了解 | 丁寧語 | 同等・目下→自分が使う | 理解して認めること |
了承 | 丁寧語 | 同等・目下→相手が使う | 事情をくんで納得すること |
語源から理解する違い
「承知」の語源
- 「承」: 相手の意向を受け入れる
- 「知」: 物事を正しく理解する
- 意味: 目上の人の指示や要求を聞き入れること
「了解」の語源
- 「了」: 明らかにする、理解する
- 「解」: 意味を解き明かす
- 意味: 内容を理解して認めること
「了承」の語源
- 「了」: 明らかにする、完了する
- 「承」: 受け入れる、承る
- 意味: 事情をくんで納得し受け入れること
「承知」の意味と正しい使い方
「承知」の基本的な意味
「承知」は、目上の人からの指示や依頼を「わかりました」と受け入れる際に使う謙譲語です。
自分の立場を低めることで、相手への敬意を示します。
「承知」が適切な場面
✅ 使うべき相手
- 直属の上司
- 会社の役員・経営陣
- 取引先の担当者
- 重要な顧客
- 先輩社員
✅ 使うべき場面
- 指示を受けた時
- 依頼を受けた時
- 確認を求められた時
- 了承を求められた時
「承知」の正しい表現パターン
基本表現
✅ 承知いたしました
✅ 承知しております
✅ 承知いたします
より丁寧な表現
✅ 承知いたしました。すぐに対応いたします
✅ 承知しております。確認の上、ご連絡いたします
✅ かしこまりました。承知いたします
「承知」を使った実践例文
指示を受けた場合
上司:「来週までに企画書を作成してください」
部下:「承知いたしました。来週水曜日までに完成版をお渡しします」
依頼を受けた場合
取引先:「資料の修正をお願いできますでしょうか」
担当者:「承知いたしました。修正版は明日の午前中にお送りします」
確認を求められた場合
上司:「会議の時間が14時に変更になったことはご存知ですか?」
部下:「はい、承知しております」
「了解」の意味と正しい使い方
「了解」の基本的な意味
「了解」は、相手の話を理解して認めることを表す言葉です。
本来は上下関係に関係なく使える言葉ですが、現在のビジネスマナーでは目上の人には使わない方が無難とされています。
「了解」が適切な場面
✅ 使うべき相手
- 同僚・同期
- 部下・後輩
- 親しい取引先
- チームメンバー
✅ 使うべき場面
- カジュアルな業務連絡
- 社内チャットやメッセージ
- 同僚間の確認事項
- 軽微な依頼への返答
「了解」の正しい表現パターン
基本表現
✅ 了解しました
✅ 了解です
✅ 了解いたします(丁寧版)
カジュアルな表現
✅ 了解!
✅ 了解しました、ありがとうございます
✅ 了解です。こちらで対応します
「了解」を使った実践例文
同僚からの連絡
同僚:「会議資料、共有フォルダにアップしました」
あなた:「了解しました。確認します」
部下への指示確認
あなた:「データ入力、午後までにお願いします」
部下:「了解いたします」
チーム内の調整
メンバー:「明日の打ち合わせ、30分遅れます」
あなた:「了解です。他のメンバーにも連絡しておきますね」
「了承」の意味と正しい使い方
「了承」の基本的な意味
「了承」は、事情をくんで納得し、承諾することを表します。
「了承する」のは基本的に立場が上の人で、目上の人が目下の人の申し出を受け入れる際に使われます。
「了承」が適切な場面
✅ 使うべき相手
- 部下・後輩
- 同僚(同等な立場)
- 一般的な取引先
⚠️ 注意が必要な相手
- 直属の上司
- 会社の役員
- 重要な取引先
「了承」の正しい表現パターン
相手に了承を求める場合
✅ ご了承ください
✅ ご了承いただけますでしょうか
✅ ご了承のほどよろしくお願いいたします
自分が了承する場合
✅ 了承しました
✅ 了承いたします
「了承」を使った実践例文
相手に了承を求める場合
「申し訳ございませんが、納期が1日遅れる可能性があります。
ご了承いただけますでしょうか」
制約事項を伝える場合
「返品は商品到着後7日以内とさせていただいております。
あらかじめご了承ください」
変更事項を通知する場合
「会議室の変更により、本日の会議は3階で行います。
ご了承のほどよろしくお願いいたします」
相手別・場面別の使い分けルール
社内での使い分け
目上の人(上司・役員)に対して
✅ 推奨:「承知いたしました」
✅ 推奨:「かしこまりました」
❌ 避ける:「了解しました」
❌ 避ける:「了承しました」
理由: 目上の人には謙譲語を使うのが基本
同僚・同期に対して
✅ 推奨:「了解しました」
✅ 推奨:「承知しました」(やや丁寧)
⚠️ 状況次第:「了承しました」
使い分けのポイント: 関係性と案件の重要度で判断
部下・後輩に対して
✅ 推奨:「了解しました」
✅ 推奨:「了承しました」
⚠️ 注意:「承知しました」(過度に丁寧すぎる場合も)
社外での使い分け
重要な取引先・顧客
✅ 最適:「承知いたしました」
✅ 最適:「かしこまりました」
❌ 避ける:「了解しました」
❌ 避ける:「了承しました」
一般的な取引先
✅ 推奨:「承知いたしました」
✅ 推奨:「了解いたします」(謙譲語をつけて)
⚠️ 場合により:「了承いたします」
下請け業者・協力会社
✅ 推奨:「了解いたします」
✅ 推奨:「承知いたします」
✅ 推奨:「了承いたします」
文書・メール別の使い分け
正式な契約書・提案書
✅ 最高レベル:「ご承知おきください」
✅ 最高レベル:「ご了承のほどお願いいたします」
一般的なビジネスメール
✅ 標準レベル:「承知いたしました」
✅ 標準レベル:「了解いたします」
社内チャット・簡易連絡
✅ 簡潔:「了解です」
✅ 簡潔:「承知しました」
ビジネスメールでの実践例文
上司からの指示への返信
例文1:資料作成の依頼
件名:Re: 企画書作成のお願い
○○課長
お疲れ様です。△△です。
企画書作成の件、承知いたしました。
来週金曜日までに初稿を作成し、確認していただければと思います。
ご質問等ございましたら、お気軽にお声がけください。
よろしくお願いいたします。
例文2:会議参加の確認
件名:Re: 来週火曜日の会議について
○○部長
いつもお世話になっております。△△です。
来週火曜日14時からの会議の件、承知いたしました。
資料は事前に拝見させていただき、準備して参ります。
当日はよろしくお願いいたします。
同僚との連絡
例文1:情報共有への返信
件名:Re: システムメンテナンスのお知らせ
○○さん
お疲れ様です。
システムメンテナンスの件、了解しました。
該当時間は業務を調整して対応します。
情報共有ありがとうございました。
例文2:資料確認の依頼
件名:Re: 月次報告書の確認
○○さん
了解しました。
明日の午前中までに確認して、コメントをお送りします。
よろしくお願いします。
取引先への返信
例文1:提案への回答
件名:Re: 新サービスのご提案
○○株式会社
○○様
いつもお世話になっております。
新サービスのご提案をいただき、ありがとうございます。
内容について承知いたしました。
社内で検討させていただき、来週中にはお返事いたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
例文2:スケジュール変更への対応
件名:Re: 打ち合わせ日程変更のお願い
○○株式会社
○○様
お疲れ様です。
打ち合わせ日程変更の件、承知いたしました。
こちらも都合を調整いたします。
新しい日程が決まりましたら、改めてご連絡ください。
よくある間違いと正しい表現
間違いパターン1:目上の人に「了解」を使う
❌ 間違った表現
上司:「資料を修正してください」
部下:「了解しました」
✅ 正しい表現
上司:「資料を修正してください」
部下:「承知いたしました」
間違いの理由: 「了解」は目上の人には失礼にあたる可能性があります。
間違いパターン2:相手の行為に「承知」を使う
❌ 間違った表現
「お忙しい中、ご承知いただきありがとうございます」
✅ 正しい表現
「お忙しい中、ご了承いただきありがとうございます」
間違いの理由: 「承知」は自分の行為に使う謙譲語のため、相手の行為には使えません。
間違いパターン3:「了承」を目上の人に使う
❌ 間違った表現
部下:「了承しました」(上司への返答)
✅ 正しい表現
部下:「承知いたしました」
間違いの理由: 「了承」には「受け入れてあげる」というニュアンスがあるため、目上の人には不適切です。
間違いパターン4:過度な美化語の使用
❌ 間違った表現
「承知の方、させていただきました」
✅ 正しい表現
「承知いたしました」
間違いの理由: 「〜の方」は不要な美化語で、却って不自然になります。
二重敬語の注意点と回避方法
よくある二重敬語の例
❌ 二重敬語:「ご承知していただく」
問題:「ご〜する」と「いただく」の敬語重複
正しい表現:「承知していただく」または「ご承知いただく」
❌ 二重敬語:「了解させていただきます」
問題:「了解」自体が理解を示す語に「させていただく」は不適切
正しい表現:「了解いたします」または「理解させていただきます」
❌ 二重敬語:「ご了承いただかせていただきます」
問題:「いただく」と「させていただく」の敬語重複
正しい表現:「ご了承いただきます」
二重敬語を避ける基本ルール
一つの語には一つの敬語
✅ 正しい:「承知いたします」
❌ 間違い:「ご承知させていただきます」
敬語の種類を統一する
✅ 尊敬語:「ご了承になる」
✅ 謙譲語:「承知いたす」
❌ 混在:「ご承知いたす」
自然な日本語かどうかの確認
判断基準:声に出して読み、違和感がないか
違和感がある場合:敬語の使い方を見直す
正しい敬語変換の手順
Step 1:主語を明確にする
自分の行為 → 謙譲語を使用(承知いたします)
相手の行為 → 尊敬語を使用(ご了承いただく)
Step 2:適切な敬語形を選択する
謙譲語:承知いたします、了解いたします
尊敬語:ご了承ください、ご了承いただく
Step 3:文脈に応じた調整
相手との関係性:敬語レベルの調整
場面の重要性:表現の丁寧さの調整
場面別敬語選択の実践ガイド
緊急時の対応
緊急度が高い場合
✅ 簡潔で確実:「承知いたしました。すぐに対応します」
✅ 緊急時でも丁寧:「了解いたしました。急ぎ対応いたします」
緊急度は低いが重要な案件
✅ 丁寧な確認:「承知いたしました。詳細を確認の上、対応いたします」
電話での対応
受話時の基本パターン
✅ 標準:「承知いたしました」
✅ より丁寧:「かしこまりました。承知いたします」
復唱確認時
✅ 確認表現:「○○の件について承知いたしました。念のため確認いたしますが…」
会議での発言
指示を受けた場合
✅ 会議での応答:「承知いたしました。○月○日までに対応いたします」
提案への反応
✅ 検討の意思表示:「貴重なご提案、承知いたしました。検討させていただきます」
まとめ:「承知」「了解」「了承」の完全習得
「承知」「了解」「了承」の使い分けは、ビジネスコミュニケーションにおける信頼関係構築の基礎となります。
適切な使い分けにより、相手に対する敬意を示し、円滑な人間関係を築くことができます。
使い分けの基本原則
✅ 相手との関係性を最優先
- 目上の人:「承知」を基本とする
- 同僚・部下:「了解」「了承」も使える
✅ 場面の重要性を考慮
- 重要な案件:より丁寧な表現を選択
- 日常業務:適度な丁寧さで効率重視
✅ 敬語の基本ルールを守る
- 二重敬語の回避
- 自然な日本語であること
✅ 相手の立場への配慮
- 謙譲語と尊敬語の正しい使い分け
- 過度でも不足でもない適切なレベル
実践のためのチェックポイント
□ 相手の立場に応じた敬語レベルの選択
□ 自分と相手の行為の区別(謙譲語・尊敬語)
□ 二重敬語の回避
□ 場面に応じた適切な表現の選択
□ 自然で品格のある表現
継続的な向上のために
敬語は実際の使用を通じて身につくスキルです。
この記事の内容を参考に、日々のビジネスシーンで適切な「承知」「了解」「了承」の使い分けを実践し、より洗練されたコミュニケーション能力を身につけてください。
相手への敬意と配慮を込めた適切な返答により、ビジネス関係の質を高め、成果の向上につなげることができます。
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