ビジネスメールやビジネス文書で書類を添付する際、「添付いたします」と「添付させていただきます」のどちらを使うべきか迷うことはありませんか?
これらの表現は、一見すると似ていますが、敬語レベルや使用場面において重要な違いがあります。
本記事では、それぞれの言葉の意味の違い、適切な使い分け方、よくある間違いなどを詳しく解説します。
正しい敬語表現を身につけて、ビジネスコミュニケーションをより円滑に進めましょう。
基本的な意味の違い
「添付いたします」と「添付させていただきます」は、どちらも「添付する」という行為を丁寧に表現したものですが、敬語のレベルと謙譲の度合いが異なります。
「添付いたします」は「添付する」に謙譲語の「いたす」を付けた表現で、基本的な謙譲表現です。
自分の行為を控えめに表現することで、間接的に相手を敬う形になります。
シンプルながらも十分に丁寧さを示す表現です。
一方、「添付させていただきます」は「添付する」に「させていただく」という謙譲表現を組み合わせたもので、「〜する許可をいただいて、させてもらう」というニュアンスを含みます。
「いたします」よりもさらに丁寧な印象を与える二重敬語的な表現です。
これを日常生活の例えで表すと、「添付いたします」は「お茶をお出しします」というような基本的な丁寧表現であるのに対し、「添付させていただきます」は「お茶をお出しさせていただきます」というように、より丁寧で遠慮がちな表現と言えるでしょう。
使い分けのポイント
フォーマル度による使い分け
状況 | 推奨される表現 | 理由 |
---|---|---|
社内の同僚や部下へのメール | 添付します/添付いたします | 基本敬語で十分。過剰な敬語は不自然 |
社内の上司へのメール | 添付いたします | 基本的な謙譲表現で適切な敬意を示せる |
取引先・顧客へのメール | 添付いたします/添付させていただきます | 関係性や内容によって選択 |
公式文書・プレスリリース | 添付いたします | 簡潔かつ適切な丁寧さを維持 |
状況による使い分け
「添付いたします」が適切な場面:
- 定型的な業務連絡(日報提出、資料共有など)
- 相手からの要請に応じて資料を送る場合
- 一般的なビジネス文書やメール
「添付させていただきます」が適切な場面:
- 特別な許可や配慮を得た場合
- 相手に何らかの負担をかける可能性がある場合
- より丁重な印象を与えたい重要な顧客とのやりとり
- 謝罪や特別なお願いに関連する文書
添付内容による使い分け
添付するものの性質によっても、表現を使い分けると適切です:
- 依頼された資料:「ご依頼いただいた資料を添付いたします」
- 追加の参考資料:「参考までに、関連資料を添付させていただきます」
- 大容量ファイル:「サイズの大きいファイルを添付させていただきます」
よくある間違い & 誤用例
過剰な敬語表現
🚫 「添付させていただいております」
✅ 「添付いたします」または「添付しております」
理由:「させていただく」と「〜ております」を組み合わせると二重敬語の過剰表現になります。
不適切な使用状況
🚫 (部下に対して)「資料を添付させていただきます」
✅ 「資料を添付します」または「資料を添付しておきます」
理由:目下の人に対して過剰な謙譲表現を使うと、距離感が不自然になります。
場面に合わない表現
🚫 (相手から要請された資料を送る際)「添付させていただきます」
✅ 「ご要望の資料を添付いたします」
理由:相手からの依頼に応じる場合は「させていただく」という許可を得る表現は冗長です。
文法的な誤り
🚫 「添付させていただきました資料をご確認ください」
✅ 「添付いたしました資料をご確認ください」
理由:過去形で使用する場合、「させていただきました」は不自然な表現になりがちです。
文化的背景・歴史的背景
日本語の敬語表現、特に「〜させていただく」という表現が広まったのは比較的最近のことです。
もともと「〜させていただく」は本当に相手の許可や恩恵を受けて行動する場合に限定して使われていました。
しかし、バブル期以降のサービス業における接客言葉の変化や、ビジネスマナーの形式化に伴い、「〜させていただく」の使用範囲が拡大しました。
特に1990年代以降、過剰敬語や二重敬語が増加したと言われています。
言語学者の中には、本来不要な場面での「させていただく」の乱用を「謙譲語の氾濫」と指摘する声もあります。
一方で、現代ビジネスシーンでは、適度な「させていただく」の使用が丁寧さの指標として定着している側面も否めません。
実践的な例文集
ビジネスメールでの使用例
社内向け:
- 「会議の議事録を添付いたします。ご確認をお願いいたします。」
- 「ご依頼いただいた先月の販売データを添付いたします。」
取引先向け:
- 「ご検討いただきたい提案書を添付いたします。お時間のある時にご確認いただければ幸いです。」
- 「お打ち合わせでお約束した見積書を添付させていただきます。ご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。」
お詫びの場面:
- 「先日の誤送信についてのお詫び文書を添付させていただきます。大変ご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。」
追加資料の提供:
- 「ご参考までに、製品の詳細仕様書も添付させていただきます。」
- 「前回のご質問に関連する資料を添付させていただきますので、ご参照いただければ幸いです。」
言い換え表現:
- 「添付いたします」→「同封いたします」「お送りいたします」「提出いたします」
- 「添付させていただきます」→「お届けさせていただきます」「ご提供させていただきます」
まとめ
「添付いたします」と「添付させていただきます」の違いを理解し、適切に使い分けることは、ビジネスコミュニケーションにおいて重要です。
文脈や相手との関係性、添付内容の性質に応じて、適切な表現を選択しましょう。
覚えておきたいポイント
- 「添付いたします」は基本的な謙譲表現で、多くのビジネス場面で適切に使える
- 「添付させていただきます」はより丁寧だが、使用場面を選ぶ必要がある
- 相手や状況に応じた適切な敬語レベルを選択することが重要
- 過剰な敬語や二重敬語は避け、明確で簡潔なコミュニケーションを心がける
- 許可や恩恵のニュアンスがある場合は「させていただく」が適している
よくある質問(FAQ)
Q1: 「添付します」だけでは失礼になりますか?
A: 相手や状況によります。
社内の同僚や部下に対しては「添付します」で十分丁寧です。
上司や取引先に対しては「添付いたします」がより適切でしょう。
Q2: 英語メールを日本語に翻訳する際、”Please find attached”はどう訳すべきですか?
A: 一般的には「添付いたします」と訳すのが自然です。
特別な配慮が必要な場合は「添付させていただきます」も使えますが、過剰な敬語にならないよう注意しましょう。
Q3: 「添付いたしております」という表現は正しいですか?
A: 文法的には誤りではありませんが、「いたす」と「おります」を組み合わせた二重敬語的表現になります。
シンプルに「添付しております」または「添付いたします」を使う方が良いでしょう。
Q4: 目上の人から「添付して送って」と言われた場合の返信は?
A: 「かしこまりました。添付いたします」が適切です。
相手からの指示に応じる場合は「させていただく」は不要です。