ビジネスシーンでよく使われる「確認させていただきます」と「確認いたします」。
どちらも確認する意思を伝える表現ですが、使うべき場面や相手によってニュアンスが異なります。
特に、目上の方やお客様とのやり取りで間違った表現を使うと、失礼な印象を与えかねません。
この記事では、「確認させていただきます」と「確認いたします」の違いや適切な使い分け方を詳しく解説し、シーン別の例文も20選ご紹介します。
これを読めば、相手や状況に合わせた適切な敬語表現が身につくでしょう。
「確認させていただきます」と「確認いたします」の基本的な意味の違い
「確認させていただきます」と「確認いたします」は、どちらも「確認する」という行為に敬語表現を加えたものですが、その構造とニュアンスには明確な違いがあります。
「確認させていただきます」の意味
「確認させていただきます」は、「確認する」という動詞に「させていただく」という謙譲語Ⅱ(丁重語)を付けた表現です。
これは「相手の許可や恩恵によって確認する行為をさせてもらう」というニュアンスを含んでいます。
つまり、「あなたのご好意によって確認させてもらいます」という意味合いが含まれ、相手への感謝や敬意を表しています。
「確認いたします」の意味
一方、「確認いたします」は、「確認する」に謙譲語Ⅰの「いたす」を用いた表現です。
これは単に「確認する」という自分の行為を丁寧に低めて表現したものです。
相手からの許可や恩恵のニュアンスは含まれておらず、ただ自分の行動を謙虚に述べる表現となります。
わかりやすいたとえ
この違いを日常的な例えで説明すると、「確認させていただきます」は「お宅の庭に入らせていただいて花を見せていただきます」というような、他者の領域に入る許可をもらうような感覚です。
一方、「確認いたします」は「私が自分の責任で確認作業を行います」と、自分の領域内での行動を丁寧に表現するようなイメージです。
使い分けのポイント
「確認させていただきます」と「確認いたします」の使い分けは、主に状況や関係性によって決まります。
適切な使い分けを身につけるために、シーン別のポイントを押さえましょう。
フォーマル度による使い分け
表現 | フォーマル度 | 適した場面 |
---|---|---|
確認させていただきます | より丁寧 | 公式な会議、重要な顧客対応、初対面の取引先 |
確認いたします | 標準的な丁寧さ | 社内コミュニケーション、日常的な業務連絡 |
相手との関係性による使い分け
「確認させていただきます」は、特に以下のケースで適しています:
- 目上の人や顧客に対して何かを確認する際
- 相手の領域や権限に関わる事柄を確認する場合
- 相手に迷惑や負担をかける可能性がある確認作業
「確認いたします」が適しているのは:
- 自分の業務範囲内での確認を伝える場合
- 相手に負担をかけない自己完結型の確認作業
- 社内の同僚や部下への連絡
ビジネスシーンでの使い分け
ビジネス場面では、特に以下のポイントを意識しましょう:
- お客様対応:基本的に「確認させていただきます」を使うことで、より丁寧な印象を与えられます
- 社内メール:「確認いたします」で十分なケースが多いですが、上司への報告なら「確認させていただきます」も適切
- 電話応対:初めての取引先やお客様なら「確認させていただきます」を使うとより丁寧な印象に
よくある間違い & 誤用例
「確認させていただきます」と「確認いたします」の使用において、誤解や誤用が生じやすいポイントを見ていきましょう。
「させていただく」の過剰使用
🚫 誤用例:「明日は10時から会議室を使用させていただきます」(自分の権限内の行動)
✅ 正しい例:「明日は10時から会議室を使用いたします」
上記の例では、会議室の使用が既に承認されている業務であれば、「させていただく」は不要な謙遜になります。
相手への配慮が必要な場面での「いたす」の使用
🚫 誤用例:「お客様の個人情報を確認いたします」(相手のプライバシーに関わる内容)
✅ 正しい例:「お客様の個人情報を確認させていただきます」
個人情報の確認は相手の領域に踏み込む行為なので、「させていただく」を使って許可を得るニュアンスを示すべきです。
二重敬語になってしまうケース
🚫 誤用例:「ご確認させていただきます」(「ご」と「させていただく」の重複)
✅ 正しい例:「確認させていただきます」
「ご確認」と「させていただく」を組み合わせると敬語の二重使用となり、不自然な表現になります。
文化的背景・歴史的背景
日本語の敬語表現、特に「させていただく」表現が広まった背景には、日本の社会文化が深く関わっています。
「させていただく」文化の広がり
「させていただく」表現は、高度経済成長期以降のサービス業の発展と共に広く使われるようになりました。
特に1980年代以降、接客業を中心に「お客様は神様」という考え方が浸透し、より丁寧な表現を求める風潮が強まったことで、「させていただく」表現が一般化しました。
現代のビジネス敬語としての定着
現代のビジネス社会では、メールやビジネス文書の普及により、書き言葉としての敬語表現がより厳密に求められるようになっています。
「確認させていただきます」は、特にEメールでのコミュニケーションにおいて定番の表現となり、ビジネスパーソンの基本的なマナーとして認識されています。
過剰敬語への批判
近年では、「させていただく」の過剰使用に対する批判も見られます。
言語学者や国語審議会などからは、必要以上に丁寧な表現を使うことで、かえってコミュニケーションが不明瞭になるという指摘もあります。
適切な場面での適切な敬語使用が求められているのです。
実践的な例文集
それでは、「確認させていただきます」と「確認いたします」の具体的な使用例を、様々なビジネスシーンに分けてご紹介します。
お客様対応での例文
- 「ご注文内容を確認させていただきます。少々お待ちください。」
- 「お客様のご要望について、担当部署に確認させていただきます。」
- 「お送りいただいた書類の内容を確認させていただきました。」
- 「ご予約の詳細を確認させていただきたく、お電話いたしました。」
社内コミュニケーションでの例文
- 「会議の日程を確認いたします。」(同僚への連絡)
- 「プロジェクトの進捗状況を確認いたしました。」(部下から上司への報告)
- 「部長のスケジュールを確認させていただきます。」(上司のスケジュールに関する確認)
- 「資料の内容を確認いたしましたが、一部修正が必要です。」(同僚との業務連絡)
ビジネスメールでの例文
- 「添付ファイルの内容を確認させていただきました。ご提案に感謝いたします。」(取引先への返信)
- 「見積書の内容を確認いたします。明日中にご返答いたします。」(社内作業の報告)
- 「御社の要望について、可能かどうか社内で確認させていただきます。」(クライアントへの対応)
- 「先日お送りした資料について、ご確認いただけましたでしょうか。」(取引先への確認)
電話応対での例文
- 「ご予約内容を確認させていただきます。お名前をお伺いできますか。」
- 「担当者の在席状況を確認いたします。少々お待ちください。」
- 「お問い合わせいただいた件について、詳細を確認させていただきたいのですが。」
- 「システムの稼働状況を確認いたします。すぐにお戻りいたします。」
その他のビジネスシーンでの例文
- 「契約書の内容を確認させていただいた上で、署名いたします。」(重要書類の確認)
- 「会場の設営状況を確認いたします。」(自分の担当業務内での確認)
- 「お客様のご意向を再度確認させていただきたく存じます。」(契約前の最終確認)
- 「今後のスケジュールを皆様と確認させていただきたいと思います。」(会議での発言)
まとめ
「確認させていただきます」と「確認いたします」は、一見似た表現ですが、使い方によって印象が大きく変わります。
適切な使い分けができると、ビジネスコミュニケーションの質が向上し、相手への敬意も正しく伝わります。
覚えておきたいポイント
- 「確認させていただきます」は相手の許可や恩恵を前提とし、より丁寧な表現
- 「確認いたします」は単に自分の行動を謙虚に述べる基本的な敬語表現
- お客様対応や目上の人への連絡では「確認させていただきます」がより適切
- 社内の一般的なコミュニケーションでは「確認いたします」で十分な場合が多い
- 過剰な「させていただく」の使用は避け、状況に応じた適切な敬語を選ぼう
正しい敬語の使い分けは、ビジネスパーソンとしての基本スキルです。
この記事で紹介した例文やポイントを参考に、適切な敬語表現を身につけていきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: 「確認いたします」と「確認します」の違いは何ですか?
A: 「確認いたします」は「確認します」に謙譲語の「いたす」を用いた丁寧な表現です。
「確認します」は丁寧語の「ます」のみを使った基本的な表現で、「確認いたします」の方がより丁寧なニュアンスになります。
ビジネスシーンでは基本的に「確認いたします」を使うことが推奨されます。
Q2: 「確認させていただいております」という表現は正しいですか?
A: 「確認させていただいております」は「させていただく」に継続を表す「ております」を組み合わせた表現で、文法的には正しいです。
ただし、「させていただく」と「ております」の二重使用で非常に丁寧な表現になるため、特に格式高い場面や特別な敬意を示したい場合に限って使うべきでしょう。
日常的なビジネスコミュニケーションでは過剰な印象を与える可能性があります。
Q3: メールの件名で「確認のお願い」と書く場合、本文では「確認させていただきます」と「確認いたします」どちらを使うべきですか?
A: メールの件名が「確認のお願い」の場合、相手に確認を依頼する内容と考えられます。
本文で自分が何かを確認する行為について述べる場合は、相手の領域に関わることなら「確認させていただきます」を、自分の業務範囲内のことなら「確認いたします」を使い分けるとよいでしょう。
例えば「添付資料の内容を確認させていただきたく、ご送付いただきました」(相手の送った資料の確認)と「私の方でデータを確認いたします」(自分の作業)というように使い分けられます。
Q4: 「確認させていただければと思います」という表現は適切ですか?
A: 「確認させていただければと思います」は「もし確認させていただくことが可能であれば、そうしたいと思います」という控えめな依頼表現です。
特に相手の許可や協力が必要な場合に使われ、丁寧かつ遠慮がちなニュアンスを含みます。
重要なお客様や目上の方に何かを確認したい場合など、相手への配慮を特に示したい場面で適切な表現です。