学術論文やビジネス文書を作成する際、「に関して」「に関する」「に関しての」という表現の違いに迷ったことはありませんか?
これらの表現は一見似ていますが、使い方を間違えると文章の流れが不自然になり、読み手に誤解を与える恐れがあります。
本記事では、これら3つの表現の正確な意味の違いと適切な使い分け方を詳しく解説します。
結論から言うと、「に関する」は連体修飾語として名詞を修飾し、「に関して」は連用修飾語として述語を修飾し、「に関しての」はその両方の性質を持つ特殊な表現です。
この違いを理解することで、より洗練された文章を書くことができるようになります。
基本的な意味の違い
これら3つの表現はいずれも「関する」という動詞から派生していますが、文法的機能と使われる文脈に明確な違いがあります。
「に関する」:連体修飾語として機能し、後ろに来る名詞を修飾します。
「〜についての」という意味で、主に文章の主題や対象を示すために使われます。
「関する」は連体形であり、必ず後ろに名詞が続きます。
「に関して」:連用修飾語として機能し、述語(動詞や形容詞など)を修飾します。
「〜について」という意味で、話題や議論の対象を導入するために使われます。
文末に使うことはできず、必ず後ろに述語が必要です。
「に関しての」:「に関して」と「の」が結合した形で、連体修飾語として機能しますが、「に関する」よりも話し言葉的な印象があります。
「に関する」と同様に後ろに名詞が続きますが、より口語的でやや冗長な印象を与えることがあります。
これらの違いは、例えるなら「に関する」は固定された道標のように主題を明確に指し示し、「に関して」は議論の方向性を示す矢印のようなもの、「に関しての」はその両方の性質を持つものと考えることができます。
使い分けのポイント
状況や文脈によって、これら3つの表現の使い分けは以下のように整理できます。
フォーマル度による使い分け
表現 | フォーマル度 | 適した場面 |
---|---|---|
に関する | 高い | 論文、公式文書、学術レポート |
に関して | 中程度 | ビジネス文書、メール、プレゼン |
に関しての | やや低い | 社内資料、ブログ、カジュアルな説明 |
文章構造による使い分け
「に関する」の使用例:
- 環境問題に関する研究
- 経済政策に関する意見書
- 歴史に関する書籍
「に関して」の使用例:
- この問題に関して詳しく説明します。
- 新製品に関して会議で議論しました。
- 彼のコメントに関して私は異論があります。
「に関しての」の使用例:
- 新システムに関しての質問があれば受け付けます。
- プロジェクトに関しての意見を募集しています。
- 予算に関しての議論はまだ続いています。
文章のリズムや読みやすさによる使い分け
文章のリズムや前後の言葉との兼ね合いによっても使い分けることがあります。
例えば、「に関する」が連続する場合は、一部を「に関しての」に変えて変化をつけることで、読みやすさが向上することもあります。
よくある間違い & 誤用例
これらの表現の誤用は、文章の品質を落とす原因になります。
以下に代表的な誤用例を紹介します。
🚫 誤用例1: 「環境問題に関して報告書を提出した。」
✅ 正しい表現: 「環境問題に関する報告書を提出した。」
または「環境問題について報告書を提出した。」
説明:「報告書」という名詞を修飾する場合は連体修飾語の「に関する」が適切です。
🚫 誤用例2: 「この件に関する私は反対である。」
✅ 正しい表現: 「この件に関して私は反対である。」
説明:述語「反対である」を修飾するためには連用修飾語の「に関して」が適切です。
🚫 誤用例3: 「経済政策に関して意見を述べる。」
✅ 正しい表現: 「経済政策に関する意見を述べる。」
または「経済政策に関して意見を述べる。」※文脈による
説明:「意見」という名詞を修飾する場合は「に関する」が適切ですが、「経済政策について意見を述べる」という意味であれば「に関して」も可能です。
文化的背景・歴史的背景
これらの表現は日本語の助詞「に」と漢語「関する」の組み合わせから成り立っています。
「関する」という動詞は、本来「関わる」「関係する」という意味を持つ言葉です。
歴史的には、近代以降の文章語として発達し、特に明治時代以降の公文書や学術文書において頻繁に使われるようになりました。
西洋の学術文書の翻訳過程で、英語の “regarding,” “concerning,” “with respect to” などの表現に対応する言葉として定着したという背景があります。
現代の日本語では、特に学術論文やビジネス文書において、「に関する」「に関して」は必須の表現となっており、日本語の論理的な文章構成の重要な要素となっています。
実践的な例文集
論文・学術文書での使用例
- 「気候変動に関する国際協力の重要性について考察する。」
- 「この現象に関してさらなる研究が必要である。」
- 「教育制度に関する改革案を提案する。」
- 「データ分析に関しての新しい手法を開発した。」
ビジネス文書での使用例
- 「新製品開発に関する会議を開催いたします。」
- 「予算配分に関して各部署からの意見を募集します。」
- 「人事制度に関する変更点をお知らせします。」
- 「海外展開に関してのリスク分析を行いました。」
日常的な文章での使用例
- 「健康管理に関する本を読んでいます。」
- 「その映画に関して友人と議論になった。」
- 「旅行先に関する情報を集めている。」
- 「子育てに関しての悩みを相談できる場所がある。」
言い換え表現
- 「に関する」→「についての」「に係る」「に関わる」
- 「に関して」→「について」「に対して」「に関しましては」(丁寧)
- 「に関しての」→「についての」「に対する」
まとめ
「に関する」「に関して」「に関しての」の違いと使い分けについて解説しました。
これらの表現を適切に使い分けることで、より明確で説得力のある文章を書くことができます。
覚えておきたいポイント
- 「に関する」は連体修飾語で、名詞を修飾する
- 「に関して」は連用修飾語で、述語を修飾する
- 「に関しての」は「に関して」と「の」の複合表現で、名詞を修飾する
- 学術論文やビジネス文書では「に関する」がより適切なことが多い
- 文脈や文章のリズムによって使い分けることで、読みやすさが向上する
よくある質問(FAQ)
Q1: 「に関する」と「に関しての」はどちらがより丁寧ですか?
A1: 一般的に「に関する」の方がより丁寧で形式的な表現とされています。
「に関しての」はやや口語的な印象があります。
Q2: 「に関して」の後に名詞を続けることはできますか?
A2: 直接名詞を続けることはできません。
名詞を続ける場合は「に関する」か「に関しての」を使用します。
ただし、「に関しては」という形であれば、特定の条件下で名詞を続けることも可能です。
Q3: 「に対して」と「に関して」の違いは何ですか?
A3: 「に対して」は対象への直接的な働きかけや態度を示す場合に使い、「に関して」は話題や対象についての言及をする場合に使います。
Q4: メールや手紙では、どの表現が適切ですか?
A4: ビジネスメールや公式な手紙では「に関する」がより適切です。
カジュアルなメールでは「に関して」も問題ありません。
Q5: 論文やレポートでは、どの表現を優先的に使うべきですか?
A5: 論文やレポートでは基本的に「に関する」を優先して使用し、文脈によって「に関して」も適切に使い分けるのが良いでしょう。
「に関しての」は基本的に避け、より簡潔な表現を心がけることをお勧めします。