文章を書く際、「なお」「また」「さらに」という接続表現の使い分けに迷うことは少なくありません。
これらの表現は一見似ているように見えますが、それぞれ異なる役割と使用場面があります。
本記事では、よくある間違いを踏まえながら、これらの接続表現の正しい使い方を詳しく解説していきます。
この記事でわかること
- 「なお」「また」「さらに」の基本的な意味の違い
- 状況別の適切な使い分けのポイント
- よくある誤用例と正しい修正方法
- コピペで使えるビジネスシーン別の例文
- それぞれの接続詞の語源と歴史的背景
「なお」「また」「さらに」の基本的な意味の違い
三つの接続詞は、いずれも情報を追加する際に使用しますが、それぞれの役割と導入する情報の性質が異なります。
「なお」の基本的意味
「なお」は、本題に関連する補足情報や例外事項、注意点を付け加える際に使用します。
主要な情報に対して、読み手や聞き手に補足的に伝えたい情報を導入するときに適しています。
「また」の基本的意味
「また」は、同等の重要度を持つ別の情報や事柄を追加するときに使います。
前の内容と並列的に新しい要素を加える場合に適しています。
「さらに」の基本的意味
「さらに」は、すでに述べた内容に加えて、程度や量が増す場合に使用します。
主に議論や説明を一段階進める際に使われ、前述の内容を強化・発展させる役割を持ちます。
比較表:「なお」「また」「さらに」の違い
接続詞 | 主な役割 | 情報の性質 | 例文 |
---|---|---|---|
なお | 補足・注釈 | 本題に対する付加情報・例外事項 | 会議は10時からです。なお、資料は事前配布します。 |
また | 並列・追加 | 前述と同等の重要性を持つ新情報 | 彼は英語が堪能です。また、中国語も話せます。 |
さらに | 強調・発展 | 前述を超える/発展させる情報 | この製品は軽量です。さらに、防水機能も備えています。 |
使い分けのポイント
状況や文脈に応じた三つの接続詞の適切な使い分けを解説します。
フォーマル度による使い分け
ビジネス文書での使い分け
ビジネス文書では、三つの接続詞はいずれも頻繁に使用されますが、特に「なお」は公式文書で重用されます。
主要な情報を伝えた後、例外事項や注意点を伝える場合に「なお」を使い、複数の重要事項を列挙する場合に「また」、議論や提案を発展させる場合に「さらに」を使うのが基本です。
学術論文での使い分け
学術論文では「また」と「さらに」が多用されます。
「また」は複数の研究結果や事実を客観的に並列する際に、「さらに」は議論を深める際や、より強い主張を導入する際に使われます。
「なお」は例外事項や研究の限界点を述べる際に使用されます。
日常会話での使い分け
日常会話では「また」が最も自然で汎用性が高く、「さらに」もよく使われます。
「なお」はやや硬い印象があり、フォーマルな場面や書き言葉で使われることが多いです。
情報の関係性による使い分け
「なお」を使うべき状況
- 主要な説明に対する例外や条件を述べる時
- 本題には直接関係ないが知っておくべき補足情報
- 注意事項や留意点を補足する時
「また」を使うべき状況
- 同等の重要性を持つ別の情報を追加する時
- 複数の事項を列挙する時
- 話題を切り替える時
「さらに」を使うべき状況
- 前述の内容をより強調する時
- 議論や説明を一段階進める時
- 程度や量が増すことを示す時
よくある間違い & 誤用例
「なお」の誤用例
🚫 誤用例1:「なお」を並列的な情報に使う
誤: 今回の展示会では新製品Aを発表します。なお、新製品Bも同時に発表します。
✅ 正: 今回の展示会では新製品Aを発表します。また、新製品Bも同時に発表します。
(解説: 新製品AとBは並列的な情報なので、「また」が適切です)
🚫 誤用例2:文章や段落の冒頭で「なお」を使う
誤: なお、本日の会議では次の議題について話し合います。
✅ 正: 本日の会議では次の議題について話し合います。
(解説: 「なお」は前述内容に対する補足なので、文章や段落の冒頭での使用は避けるべきです)
「また」の誤用例
🚫 誤用例1:「また」を補足説明に使う
誤: 提出期限は今週金曜日です。また、期限を過ぎた場合は受け付けられませんのでご注意ください。
✅ 正: 提出期限は今週金曜日です。なお、期限を過ぎた場合は受け付けられませんのでご注意ください。
(解説: 期限に関する注意点は補足情報なので、「なお」が適切です)
🚫 誤用例2:「また」と「なお」を混在させる
誤: なお、また申し上げますが、ご不明点があればお問い合わせください。
✅ 正: なお、ご不明点があればお問い合わせください。
(解説: 「なお」と「また」は役割が重複するため、どちらか一方を選びます)
「さらに」の誤用例
🚫 誤用例1:「さらに」を異なる話題の導入に使う
誤: この商品は防水機能を備えています。さらに、明日から新商品のキャンペーンを開始します。
✅ 正: この商品は防水機能を備えています。また、明日から新商品のキャンペーンを開始します。
(解説: 関連はあるが異なる話題の導入には「また」が適切です)
🚫 誤用例2:「さらに」を補足説明に使う
誤: セミナーは14時から始まります。さらに、会場は変更になる可能性があります。
✅ 正: セミナーは14時から始まります。なお、会場は変更になる可能性があります。
(解説: 会場変更の可能性は補足情報なので「なお」が適切です)
実践的な例文集
さまざまな文脈における「なお」「また」「さらに」の適切な使用例をご紹介します。
ビジネスメールでの使用例
「なお」のビジネスメール例文
- お見積書を添付いたします。なお、納期につきましては別途ご相談させていただければ幸いです。
- セミナーへのお申し込みありがとうございます。なお、当日は会場が混雑することが予想されますので、お時間に余裕をもってお越しください。
- ご質問いただいた件について回答いたします。なお、詳細については添付資料をご参照ください。
「また」のビジネスメール例文
- お見積書を添付いたします。また、類似商品のカタログも同封いたしましたので、ご検討の参考にしていただければ幸いです。
- セミナーへのお申し込みありがとうございます。また、事前アンケートにもご協力いただければ幸いです。
- ご質問いただいた件について回答いたします。また、次回のアップデートでは更に機能が追加される予定です。
「さらに」のビジネスメール例文
- 新製品は従来品より20%軽量化されました。さらに、バッテリー寿命も2倍に延長されています。
- 第1四半期の売上は前年比10%増加しました。さらに、利益率も5ポイント向上しており、好調な業績となっています。
- 新システムは処理速度が大幅に向上しています。さらに、セキュリティ機能も強化されているため、安心してご利用いただけます。
学術論文での使用例
「なお」の学術論文例文
- 本研究では20代から30代の被験者を対象に調査を行った。なお、被験者の選定にあたっては、職業や学歴による偏りが生じないよう配慮した。
- 実験結果から、温度上昇に伴い反応速度が増加することが明らかになった。なお、60度以上では酵素の変性が始まるため、別の反応機構が働く可能性がある。
- 統計処理にはSPSSを使用した。なお、有意水準は5%に設定している。
「また」の学術論文例文
- 第一の実験では視覚刺激に対する反応時間を測定した。また、第二の実験では聴覚刺激についても同様の測定を行った。
- 従来の理論では説明できない現象が観察された。また、先行研究との比較からも新たな理論構築の必要性が示唆された。
- 植物の成長には光の強度が影響する。また、波長の違いによっても成長パターンが変化することが明らかになった。
「さらに」の学術論文例文
- 分析の結果、変数Xと変数Yの間に有意な相関が見られた。さらに、変数Zを統制した場合でも、この相関関係は維持された。
- 治療群では対照群と比較して症状の改善が確認された。さらに、副作用の発生率も低く、安全性の高さが示された。
- 当該手法は計算コストを50%削減できる。さらに、精度も従来手法を上回り、実用性の高さが証明された。
日常会話での使用例
「なお」の日常会話例文
- 明日の旅行、8時に駅前集合だよ。なお、電車の時間の関係で、5分以上遅れると置いていくから気をつけてね。
- このレシピで作ると美味しいよ。なお、材料の牛乳は必ず常温に戻してから使ってね。
- 映画は7時からだから、6時半には集合しよう。なお、チケットは私が予約済みだから安心して。
「また」の日常会話例文
- 彼は英語がペラペラで、海外でも困らないよ。また、フランス語も少し話せるから、ヨーロッパ旅行にはぴったりの同行者だね。
- このカフェはコーヒーが美味しいんだ。また、ケーキもハンドメイドで評判がいいよ。
- 週末は友達と買い物に行く予定。また、その後で新しくオープンした映画館にも行ってみようと思っているんだ。
「さらに」の日常会話例文
- この商品は防水機能があって便利だよ。さらに、軽量で持ち運びにも困らないんだ。
- 彼女は英語が堪能だ。さらに、発音も綺麗で聞き取りやすいんだよ。
- このアプリは無料で使えるんだ。さらに、広告もほとんど表示されないから快適だよ。
「なお」「また」「さらに」の文化的・歴史的背景
これらの接続詞の背景を知ることで、より理解が深まります。
「なお」の語源と変遷
「なお」(尚)は元々「なほ」という発音で、「まだ・さらに」という意味の副詞でした。
平安時代の文学作品にも登場し、時間的な継続や程度の強調を表していました。
時代とともに、この継続の意味から「さらに付け加えて」という補足的な意味へと用法が拡張されていきました。
特に公文書や正式な文書では、明治時代以降、論理的な文章構成の必要性が高まり、「なお」が補足説明を導入する接続語として定着していきました。
「また」の語源と変遷
「また」(亦・又)は古くから「再び」や「加えて」の意味で使われてきました。
古典文学では「またの機会」「また会う日まで」のように時間的な再来を表す用法が中心でしたが、現代では並列的な情報の追加や新たな話題の導入という用法が主流になっています。
「さらに」の語源と変遷
「さらに」は「更に」と表記し、元々は「もっと」「一層」という程度の増加を表す副詞でした。
古語の「さら」(新しい・別の)に助詞「に」が付いた形です。
現代の日本語では、議論や説明を発展させる接続詞としての用法が定着しています。
文化的背景
日本語のコミュニケーションでは、情報の重要度や関係性を明示的に示す接続詞が発達しています。
これは「言わなくても分かるはず」という文化的背景がある一方で、誤解を避けるために情報の位置づけを繊細に表現する必要性から生まれたものです。
特に「なお」と「また」の使い分けは、この日本語特有の情報の階層化と関連しています。
まとめ
「なお」「また」「さらに」は、どれも情報を追加する接続詞ですが、その使い分けは文脈や伝えたい内容の関係性によって決まります。
覚えておきたいポイント
- 「なお」は補足情報・例外事項・注意点を示す(脚注のようなイメージ)
- 「また」は同等の重要性を持つ情報の追加・並列を示す(新しい箇条書き項目のイメージ)
- 「さらに」は前述内容の発展・強調・程度の増加を示す(議論を前進させるイメージ)
- フォーマルな文書では3つとも頻繁に使われるが、カジュアルな会話では「また」と「さらに」の方が一般的
- 情報の関係性(主従関係・並列関係・発展関係)で使い分けを判断する
これらの接続詞を適切に使い分けることで、より論理的で分かりやすい文章を作成することができます。
日々の文章作成において、これらのポイントを意識して実践していきましょう。
「なお」の代わりに使える表現集はこちら ▶︎“なお”は使いすぎ?言い換え表現15選と文例付きで解説
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よくある質問(FAQ)
Q1:「なお」と「ちなみに」はどう違いますか?
A: どちらも補足情報を加える際に使いますが、「なお」はよりフォーマルで、重要な補足に使われます。
「ちなみに」はややカジュアルで、本題から少し離れた情報を加える際に適しています。
Q2:「また」と「そして」の違いは何ですか?
A: どちらも情報を追加する際に使いますが、「また」は独立性の高い新情報を加える際に使われ、「そして」は前の内容と時間的・論理的に連続性がある場合に使われます。
Q3:「さらに」と「加えて」の違いは何ですか?
A: 両方とも追加情報を導入する際に使いますが、「さらに」は程度や量の増加、前述内容の発展という要素が強く、「加えて」はより中立的に情報を追加するニュアンスがあります。
Q4:同じ文章の中で「なお」「また」「さらに」を複数回使っても良いですか?
A: 可能ですが、多用すると文章が冗長に感じられることがあります。
特に短い文章の中では、言い換え表現も活用するとよいでしょう。
Q5:「なお」「また」「さらに」の英語表現は何ですか?
A: 「なお」は “furthermore”、”moreover”、”in addition” や “additionally” に近いニュアンスです。
「また」は “also”、”moreover”、”furthermore” などに相当します。
「さらに」は “furthermore”、”moreover”、”in addition”、”even more” などに相当しますが、文脈によって適切な表現は変わります。